「手かざしで健康」信じ… 九州の宗教法人の元信者告白 法人「違法勧誘や強要せず」

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 「手かざしを受ければ健康になれる」。そんな触れ込みで多額の「お布施」を受け取っている宗教法人があるとの情報が特命取材班に寄せられた。信教の自由は憲法で保障されており、何を信じるのも個人の自由。とはいえオカルトのたぐいではという印象も受ける。かつて信者だったという50代男性に話を聞いた。効果はあったのだろうか。

 九州北部に本拠地を置く宗教法人に男性が入会したのは数年前。母親を亡くし、更年期障害も重なって不眠が続いていたとき、友人から誘われたのがきっかけだった。連れて行かれたリーダー格の信者の自宅で「人間には不思議な力がある」「手のひらから力を注げば病気が良くなる」と説明を受けた。半信半疑だったが、がんだった友人が「医師に『がん細胞が小さくなっている』と言われた」と話すのを聞き、信じてみようと思った。

 1カ月通うと「儀式を受ければ誰でも力を授かれる」と勧められ、お布施名目で80万円払って入会。毎晩開かれる勉強会に1回1万円で参加した。しばらくすると「信者を増やせば力がより強くなる」と家族の勧誘を求められた。「空に手を向けると雲が動かせる」とも言われ、徐々に不信感が募って脱会したという。

 宗教問題に詳しい福岡県の青木歳男弁護士は「この法人の前身は、『手かざしで病気を治す』とうたい多額の治療費などを集めた団体『泰道』だ」と指摘する。元会員ら115人が泰道(1997年に解散)やこの法人などに損害賠償を求めた訴訟では、裁判所は「健康に不安を抱く人に体験談などで病気が治ると誤信させた詐欺的手法」として勧誘方法の違法性を認定、計約1億6千万円の賠償を命じた。判決は2004年に確定した。

 青木弁護士は「社会問題化した後は目立たないように活動しているが、今も相談は寄せられる」と言う。この法人を巡る別の訴訟に提出された証拠によると、03~14年で全国の消費生活センターに計61件の相談が寄せられており「『失明した目が治る』と言われて通ったが治らない」など悪質とみられる内容もあった。

 記者も知人に誘われて、この法人が開く不思議な力の体験会に参加したことがある。いすに腰掛けた記者に信者が両手をかざし、至近距離で力を送り込む。20分は続いただろうか。記者が悩む肩こりは改善しなかったが、熱気が伝わったのか体が少し温まったような気はした。信者は「治る」と明言はしなかった。

 法人は取材に対し、「目に見えない力の実在を証明している宗教で、『病気が治る』活動をしているわけではない」と回答。その上で、違法な勧誘や浄財の強要をしないよう指導しているとした。ホームページにはさまざまな症状が改善されたという体験談が掲載されているが、「個人差があること」や「治療や服薬は医師に相談を行うこと」なども明記しており問題ないという立場を示した。

 信者だった男性によると、友人はその後がんで亡くなったという。「病気に苦しむ人も多かった。人の不幸につけこんでもうけているとすれば許せない」。信じる者は救われる、というがどうだろうか。

=2018/05/12付 西日本新聞朝刊=

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