「偽電話」詐欺、見抜けぬ理由 元詐欺団メンバーが手口明かす 「相談相手がいれば…」

詐欺グループの一員だった服役中の男性から記者に届いた手紙。詐欺の手口が詳しく書かれていた。出所後は会社員として働いているという
詐欺グループの一員だった服役中の男性から記者に届いた手紙。詐欺の手口が詳しく書かれていた。出所後は会社員として働いているという
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 電話をきっかけに現金をだまし取られる詐欺被害が後を絶たない。警察庁によると、昨年の被害総額は約390億円に上る。特命取材班にも、5千万円を詐取されたという70代の母親を持つ女性からメールが寄せられた。どうしてだまされてしまうのか。かつて詐欺グループの一員だった元受刑者に、「だますテクニック」を聞いた。

目標失い道を踏み外す

 日焼けした肌に短く刈り込んだ髪。東京都内の待ち合わせ場所に現れた20代男性は、数年前に法廷で見た童顔で色白の姿とは印象が異なっていた。高齢者から多額の現金をだまし取った罪で実刑判決を受け、数カ月前に刑務所から出てきたばかり。「サーフィンばかりしています」とはにかむ姿は、多くの人の人生を狂わせた人物には見えない。

 小学生のころからスポーツに打ち込んだという男性。高校時代に念願だった全国大会出場を果たすと、「目標を失い道を踏み外した」。進学した大学にもろくに通わず、東京・渋谷で性風俗店などに女性をスカウトするアルバイトに精を出した。そのつてで知り合った若い男から詐欺に誘われた。高級ブランド品を身に着ける姿を見て「やるしかないでしょと思った」と言う。

 マンションの一室に数人で生活し、名簿を基に電話をかけた。逮捕されるまでの1年間で、だまし取った額は1億円超。「売り上げ」の15%が取り分だったといい、土日は財布に入りきらない1万円札をポケットに押し込んで街に繰り出した。

 「居酒屋から風俗店、キャバクラを4~5軒回ってまた風俗店。高級バッグや時計も買ったが、それでも金を使い切れなかった」

過去の被害者名簿から標的探す

 男性たちのグループは、過去に投資話で被害に遭った人たちの名簿を入手し、標的を探した。被害の経験があれば、警戒心は人一倍強いはずだが…。男性はだまし文句を再現した。

 「西日本商事の○○です。国から委託されて過去の投資被害を調べています」

 「200万円被害に遭われているんですね。詐欺会社が摘発されたので、お金が戻ってきますよ」

 「でも、あなたの持っている株券は紙切れ同然。あなとく商社の株を20万円分買ってくれれば、セットで買い取りますよ」

 これが大枠のストーリー。ここから信じる理由を与えていくという。

相手が信じれば、もうけ話に切り替える

 例えば、弁護士を名乗って別の番号から電話し、「被害が回復できると持ち掛ける詐欺が横行してますから気をつけて。西日本商事や○社以外は危ないですよ」と吹き込む。他にも株の格付け会社と偽り、「あなとく商社の株は優良だ」とすり込んだり、お金を取り戻せた高齢者のふりをしたりする。

 相手が信じれば、そこからもうけ話に切り替えた。「あなとく商社の株は確実に値上がりする。1・2倍で買い取るからもっと投資した方がいい」。一方、ためらう人には「不安ならいいですよ。キャンセル待ちの方もいる」と突き放して電話を切った。不安に駆られた被害者の中には、自ら電話をかけてくる人もいたという。

「相談相手がいる人はだまされなかった」

 5千万円をだまし取られたという女性の母親のケースも、手口に共通点が多い。母親は過去に投資被害に遭っていた。「お金を取り戻すには口座を空にする必要がある」と言われ、指示通りに預金をレターパックや段ボール箱に詰め、指定された私書箱に送り続けたという。「話をよく聞いてくれ、ちょうど良い話し相手になったことで、母は信頼したんだと思う」。女性は悔しさをにじませた。

 この犯罪が認知されてから15年ほど。オレオレ、架空請求、還付金など詐欺の手口は多様化するばかりで、被害は一向になくならない。どうすれば身を守れるのだろうか。「相談相手がいる人はだまされなかった。一人じゃやられますね」。男性の言葉が頭に残った。

=2018/05/23付 西日本新聞朝刊=

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