修理費巡りトラブル相次ぐ 車の任意保険未加入が火種に 議員が追突事故の支払い拒み裁判沙汰も

議員が昨年8月に追突事故を起こした福岡市東区香椎浜の現場付近(写真の一部を加工しています)
議員が昨年8月に追突事故を起こした福岡市東区香椎浜の現場付近(写真の一部を加工しています)
写真を見る

 任意保険に加入していない車が事故を起こし、修理費用などを巡ってトラブルになるケースが後を絶たない。特命取材班にも福岡県の議員が追突事故を起こし、支払いを拒んで裁判になっているとの情報が寄せられた。法律で加入が義務付けられる自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)と違いあくまで「任意」の保険だが、政務活動にも使う車がなぜ未加入で、もめている理由は-。取材を進めると問題長期化の背景や任意保険の大切さが見えてきた。

 事故は昨年8月の夕方、福岡市東区で発生。信号停車中の広島市の夫婦の車に女性議員の車が低速で追突した。車後部のバンパーがへこみ、バンパーに付いているセンサーも破損。当初、夫婦は痛みを感じなかったため物損で処理したが、首などに違和感を覚えて4日後に病院を受診。頸椎(けいつい)捻挫症候群などと診断され人身事故に切り替えた。

 治療費や休業損害など対人補償は自賠責保険で賄われるが、車の修理費などは任意保険の対象で、保険未加入の議員が責任を負う。夫婦はバンパーやセンサーの交換など約15万円を業者の見積もりに基づき請求したが、議員は「事故との因果関係がはっきりしない」と一部の支払いを拒否。代車費用も「必要性があるか疑問」として応じなかった。

 夫婦は保険の特約でつけた弁護士と相談し、今年1月、慰謝料も含めた約65万円の支払いを求めて広島簡裁に提訴した。

       ■

 夫婦に過失はないにもかかわらず、なぜ議員は支払いを拒むのか。政務活動にも使っている車が保険に入っていないのはどうしてか。疑問をぶつけると、「昨年5月の更新月が忙しく、保険の更新を忘れてしまった。単純に私の落ち度」と釈明。その上で「更新忘れと、支払いを拒んでいることは別問題」と強調した。

 議員によると、夫婦の車には追突箇所より高い位置にもへこみがあり、事故時のやりとりから「不正請求してくるんじゃないかと思った」。後になって人身事故に切り替えたこと、約30回の治療にも不信感を抱いたという。「疑わしいところは証明してもらわないかぎり払えない」とし、議員としての「正義感」が働いたとも口にした。

 ただ、修理費用の見積もりを出した業者に取材すると、議員が不正請求を疑っている部分は修理対象に入っていないことが判明。破損したセンサーは、バンパーより上部にあるバック用カメラと議員が勘違いしていたことも分かった。

       ■

 損害保険料率算出機構によると、任意保険と共済保険の加入率は全国平均で87・9%(昨年3月末)。8・3台に1台が未加入ということになる。九州では鹿児島81・7%、宮崎83・9%、福岡86・5%など。佐賀県を除き6県で全国平均を下回っているのが現状だ。

 交通ジャーナリストの柳原三佳さんによると、未加入車による事故やトラブルは「日常茶飯事」。任意保険に加入していれば保険会社が修理費用の妥当性を調査するが、未加入ならそれも難しい。「うそをついたり、ごねたりして支払いを逃れようとする者もいる」と指摘する。

 今回の事故では、修理の見積もり明細などを基に、夫婦や業者に問い合わせれば修理箇所の誤解は解けただろう。議員は不信感からコミュニケーション不足を生んでしまったことも認め、「こういうトラブルが起きないためにも任意保険には絶対入った方が良いと思う」と話した。事故後、任意保険に再加入したという。

=2018/08/20付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]