ベランダ喫煙マナーに反響 管理会社はどう対応?苦情は月100件、増加傾向に

日本たばこ産業やマンション管理会社は、喫煙マナーを守るようさまざまなチラシで呼び掛けている
日本たばこ産業やマンション管理会社は、喫煙マナーを守るようさまざまなチラシで呼び掛けている
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 隣人のベランダ喫煙に悩む男性の声とともに、集合住宅での喫煙を巡る現状を10月19日付くらし面に掲載したところ、喫煙者、非喫煙者の双方からさまざまな意見が寄せられた。その声を携え関係者に当たってみたが、ベランダ喫煙は違法ではなく、マナーの問題でしかないため、双方が納得する解決策は容易に見つからないようだ。

 記事では、2020年4月に施行される改正健康増進法で、職場や飲食店など多数が集まる場は原則禁煙となるが、集合住宅は対象外となっていることなども紹介。記事は本社ホームページやヤフーニュースを通じ、九州以外でも読まれた。

 「臭いが嫌なだけでなく、煙に含まれる化学物質でアレルギーを発症した。直接煙を吸わなくても、喫煙者と同じ部屋にいるだけで鼻水とせきが止まらなくなる」。化学物質過敏症と診断されたという都内の男性(76)は訴える。

 ベランダだけではなく、廊下や自室での喫煙も「臭いが漏れてくる」という声も。3歳の子を持つ福岡市の女性(44)は「自室の換気扇の下で吸っているのではないか。換気口から臭いがうちの部屋に流れ込んでくる。自室内なので隣人に文句も言えず、困っている」という。空気清浄機だけでは臭いがなくならず、外気の流入を遮断できる換気口カバーの購入を検討している。廊下で吸っている住人を見掛けたこともある。

 大阪府の男性(62)は「退職後に家でゆっくりしようと思っていたら、たばこの煙に悩まされるとは。室内で吸う人は、他の部屋に臭いが伝わっているとは思ってもいないのではないか」と指摘する。

 こうした問いを、約3万3千件の賃貸物件を管理する三好不動産(福岡市)にぶつけてみた。廊下は「共用部分」に当たるため同社の物件の多くで禁煙と定めており、喫煙をやめさせられるが、自室は「専有部分」、ベランダは「専用使用権がある共用部分」のため禁煙にしていない。そんな中、ベランダ喫煙に関する苦情は月に100件前後寄せられ、増加傾向。住民からの全ての苦情が月約1500件というから、少なくない。

 苦情を受けると、同社はエレベーター内などに喫煙マナーを守るよう呼び掛ける張り紙を掲示する。改善されなければ、喫煙している可能性のある住民に直接伝える。すぐに応じる人もいれば、「禁止されてない」と強気な人もいるが、お願いし続けるしかないという。「トラブルを避けるため、絶対に住民だけで対応しないよう言っている」

 中には、大家が新しく代わり、その意向で室内も含め「敷地内全面禁煙」になった物件もあるが、既に入居している全住民の承諾を取り付けるのに時間がかかった。

 分譲マンションも同様に対応が難しい。約700のマンション管理組合が加入するNPO法人福岡マンション管理組合連合会は「管理規約で『共用部分は禁煙』と定めているところはあるが、ベランダは住民に専用使用権があるため禁煙とならない」。管理規約を改正し、ベランダ喫煙の禁止を明記しようとしても、区分所有者の大多数の賛成が必要でハードルが高い。

 一方で、喫煙歴20年の男性(40)=福岡市=からは「きちんとマナーを守って吸っているのに、一部の人のために喫煙者全体が悪いように言われて肩身が狭い」との嘆きも漏れた。1日に20本ほど吸うが、会社の喫煙所がほとんどで、路上では吸わないし、一戸建ての自宅でも寝る前にベランダで1本だけだ。会社では最近、7カ所あった喫煙所が2カ所に減って「喫煙者包囲網」を実感する。

 非喫煙者からも擁護する声が聞かれた。同市の女性(42)は「集合住宅を選んだ以上、上階の足音と同じで、食後の一服ぐらい我慢してもいいのでは」。ベランダ喫煙の煙が室内に流れて体調が悪化したとして、70代女性が隣人を相手に起こした損害賠償請求訴訟でも、12年に名古屋地裁は原告勝訴としたが、集合住宅に住む特殊性から「原告も煙の流入についてある程度は受忍すべきだ」とも指摘した。

 日本たばこ産業(JT)は本社や支社に「分煙コンサルタント」を配置。各施設が分煙スペースを設置する際に派遣しアドバイスをしているが、飲食店やオフィスビル、商業施設からの依頼が多く、集合住宅はないという。「吸う人と吸わない人が快適に共存できるようできる限りのことをしているが、集合住宅では基本的に自室で吸えるので需要がない」と九州支社の担当者は話す。

=2018/11/02付 西日本新聞朝刊=

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