なぜ?今なお続く避難指示 豪雨から4カ月 復旧工事始まらず…背景に意見の相違

擁壁が崩れて土のうとブルーシートで応急処置をした葉石誠造さん。上に立つのが自宅
擁壁が崩れて土のうとブルーシートで応急処置をした葉石誠造さん。上に立つのが自宅
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 7月の西日本豪雨から間もなく4カ月。福岡市南区に「依然として避難指示が継続中の地域がある」と、特命取材班に連絡が入った。ため池沿いに住民たちが築いた擁壁が大雨で崩れ、危険な状態が続いているそうだ。なぜ復旧工事が始まらないのだろう。背景には、崩落の原因や復旧方法について、住民と市との間で意見の相違があった。

 南区桧原4丁目の住宅地に、農業用ため池「源蔵池」(約3万3千平方メートル)がある。大雨が降った7月6日午後、池のそばにある葉石誠造さん(74)の自宅では、庭が擁壁ごと池側に崩れ落ちた。葉石さんは2週間ほど息子宅に避難し、自費で約250万円かけて土のうとブルーシートで応急処置した。現在も自宅で暮らすが「雨が降ってまた崩れないか」と心配そうな表情を浮かべる。

 大雨で、池の周囲では地盤沈下や石垣のひび割れなどの被害が相次いだ。市は桧原4丁目と大平寺2丁目の計14世帯33人に避難指示を出した。応急処置は施されたが、そこから先が進まない。住民と池を管理する市の間で、原因や復旧方法についての意見の相違があるからだ。

 住民側は擁壁が崩れた原因について、大雨によって池の水位が上がったことが原因の一つと主張。市がまず池に沿って新たに護岸を築き、その上に住民側で擁壁を再建して安全性を高める考えを持っている。葉石さんは「擁壁だけを再び造っても同じ被害が起こりかねない。護岸がないと安心できない」と訴える。

 一方、市側は大雨によって擁壁が壊れたことは認めるが、池の水位上昇の影響については「調査中」。この調査結果が出るまで、市が護岸工事に取り組むことはない。

 池の周りには部分的に市が護岸を築いたところがある。市農業施設課によると、過去にのり面が崩れた時に災害復旧事業で築いたという。同じように護岸が築けそうなものだが、同課は「以前は自然にできたのり面が崩れた。今回は住民が築いた擁壁が崩れたから、復旧は住民がするべきだ」と説明する。

 復旧工事が進まず、自宅を離れる人も出てきた。庭の倉庫などが滑り落ちた西岡昭男さん(82)は近くのマンションに引っ越す予定。「長年住んできた所から離れたくはないが…」と漏らす。住民側は護岸工事の着手を求め、市議会に請願書を提出する構えだ。市農業施設課の淵上康英課長は「できるだけ早く調査を急ぎ、護岸工事が必要かどうか判断したい」と話すにとどめている。

 西日本豪雨では、各地でため池の損壊が起き、問題になった。福岡市南区にはため池が56カ所ある。市民の防災への関心が高まる中、避難指示を出したままの状態を一刻も早く解除できるよう、まず市は努力すべきだ。さらに、どうすればため池全体の安全を保てるのか、対応が求められている。

=2018/11/03付 西日本新聞朝刊=

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