「情けない」「贈収賄ではないか」 警官執筆料問題、現場から怒り噴出 処分求める声も

 警察庁と17道府県の警察官が、昇任試験の対策問題集を出版する「EDU-COM」(東京)から原稿執筆料を受け取っていた問題では、現職幹部やOBが副業と疑われる執筆を繰り返し、大量の内部文書を流出させていたことも判明した。次々と明らかになる背信行為に、現場からは怒りの声が噴出している。

 「自分が払っていた購読料が、回り回って幹部の懐に入っていたなんて」。昇任を目指し問題集で勉強してきたという福岡県警の20代巡査長はあきれかえる。

 同社は福岡県警向けの県版を毎月発行。特に試験前に刊行する直前対策集はよく当たると評判だった。同社関係者によると、対策集は特定部署の警部が持ち回りで執筆、1回で40万円が支払われていたという。

 長く刑事部門に勤めた0Bは「情けない。現場の多くは真面目に頑張っている。関与した人間は処分されなければならない」と憤る。捜査員の間では「試験に出る問題を流し、金をもらったら贈収賄ではないか」との声も出ているという。

 熊本県警の巡査は以前、ある部長から「問題集を買わないと評価を下げる」と告げられたという。「内部資料を誤って処分しただけで始末書を書かされるのに、幹部が持ち出して金に換えていたなんて論外。問題ないと言っている上司もいるが、現場はみんな怒っている」と打ち明けた。

   ■    ■

 幹部ら48人が執筆に関わったとみられる兵庫県警では、同社顧問を務めるOBが現職に執筆を発注。執筆者は「打ち子」と呼ばれ、「県警には報告しない」というルールで代々引き継がれてきた。うち1人の警視は親族名で執筆を請け負っていた。県警の調査に「親族に作業を手伝ってもらい、小遣いにしてもらおうとした」と釈明したという。

 宮城県警では、東北管区警察局に出向中の警視正が執筆を一手に請け負っていたという。2012年8月~17年3月に計約500万円が支払われ、450件以上の内部文書を提供したとみられている。県警内からは「特定企業と恒常的に取引しているとしたら大問題だ」「内部文書を渡すのは警察官として常識外れ」との批判の声が相次ぐ。

 執筆に関わった幹部やOBからは開き直りとも取れる発言も目立つ。同社顧問を務める北海道警OBは「昇任試験に向けて両者(警察と出版社)一丸となって取り組むことが悪いとは思わない。必死に仕事し、必死に勉強する後輩のためだ」と言い張った。ただ後輩たちは冷ややかだ。道警本部の50代警視は「後輩のためなら金を受け取る必要はない。ただの小遣い稼ぎだ」。40代警部補も「昇任を目指す受験者の金で一部のOBや現職がもうけている。これでは若い警察官の士気も下がる」と批判した。

 同社の支払いリストによると、2010年1月~17年3月、警察官467人に原稿執筆料として計1億円超が支払われていた。うち36人には1年以上、毎月支払いがあり、月の最高額は約137万円に達した。 (社会部特命取材班、神戸新聞、河北新報、北海道新聞)

=2019/01/12付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]