図書館司書、進む非正規化 年収は正規の3割 異例のストライキ予告も

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さまざまな分野の本を所蔵する図書館。司書の仕事は選書や文献探しの支援など専門知識が求められる=福岡市
さまざまな分野の本を所蔵する図書館。司書の仕事は選書や文献探しの支援など専門知識が求められる=福岡市
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 「図書館司書の給料を半額に減らす動きがあるそうです」。福岡市の図書館でボランティアに携わる女性から、特命取材班に情報が寄せられた。対象となる司書は非正規職員。国家資格を持つ専門職でありながら、厳しい雇用条件が突き付けられているという。地域の文化拠点である図書館で何が起きているのか。

 女性によると、非正規で働く司書の多くは勤務年数にかかわらず、月給19万円程度。市から昨秋、10万円近くまで下げる方向の提案が組合にあったという。「いきなり半額だなんて、生活できなくなりますよ」

 市内で働く司書約80人のほとんどは非正規職員で、影響は大きそうだ。市に取材すると、司書を含め非正規職員の給与体系を見直していると認めた。非正規職員を「会計年度任用職員」とする新制度が2020年4月、全国で導入されるのに合わせた対応だという。

 総務省のマニュアルに沿い、職務や職責によって決まる正規職員の給料表を、非正規にも適用することを検討しており、その結果によって「減額もありうる」と説明した。

 具体的な金額は市と組合の間で団体交渉中。当初提案より額を上積みする検討も行われており、市は「職務経験をどう反映させるか、まだ協議は続いている」。組合側も「現時点では答えられない」としている。

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 司書が不安定な待遇にあえぐのは全国的な傾向だ。

 地方自治総合研究所(東京)の上林陽治研究員によると、自治体の財政難を背景に近年、司書の非正規化が急速に進んだ。全国の公立図書館の非正規職員は1万6127人で、20年前の2倍超に増加。多くは年収200万円前後で、正規の3割ほどの収入で働く。

 上林研究員は「公立図書館は、官製ワーキングプアという貧困を基に成り立っている。このままでは司書のなり手が不足し、運営に支障が出る」と指摘する。

 実際、人材確保に苦労する例も。全国519館の業務委託・指定管理を担う「図書館流通センター」(東京)では司書の求人に応募が少なく、定員ぎりぎりの館が少なくない。病欠が出た時などに近隣の図書館同士で司書を融通することがあるという。広報担当者は「自治体との契約上、賃金は簡単に上げられない。他業種より給料が安く、図書館で働きたい人も別の仕事に就いてしまう」と嘆く。

 練馬図書館(東京)の司書でつくる労働組合は昨年12月、指定管理者制度の導入を検討する区に反発し、異例のストライキ決行を予告した。結局は延期したものの、組合の岩村陽恵さん(36)は「私たちは図書館を守りたい一心で働いている。少しでも安心できる職場にしてほしい」と訴える。

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 「非正規の司書が多くなれば、全員の意思統一が図りにくくなる」

 かつて福岡県小郡市立図書館長を務めた福岡女子短期大学の永利和則特任教授(図書館学)は、サービスや質の低下につながりかねない問題点を挙げる。

 同館は06年に指定管理者制度を導入。10人近くいた正規職員を3人に減らし、残りを短期雇用の非常勤職員で補ったが、勤務シフトが複雑になり、全員で集まる機会が減った。

 差別的な表現を含む書籍や、少年犯罪を実名掲載する雑誌が発行された場合、司書同士が取り扱いを話し合うのが通例。そうした対応に支障が出たという。

 さらに別の図書館の司書は打ち明ける。「司書の資格を持たない正規職員の上司が購入する本をトップダウンで決め、選書会議に出られない司書の意見が届かないこともあった」

 インターネットで書籍を簡単に注文できる時代。図書館の存在意義は揺らいでいるのだろうか。「身近な図書館の会・福岡」の力丸世一代表(71)は「貧しくて本を買えない人も、平等に知識を得られる図書館は単なる貸本屋でなく、言論の自由や知る自由を守るとりで。運営を支える司書の大切さを考えてほしい」と語った。

=2019/01/16付 西日本新聞朝刊=

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