なぜ?入会金10万円 驚きの自治会ルール 「出不足金」女性だけ徴収の地域も

 「入会金として10万円を請求する自治会があるそうです」。福岡県糸島市の女性から、特命取材班にこんな情報が寄せられた。事実ならば、一般的なスポーツクラブの入会金を上回る高額。住民が自主運営する自治会で、どうして-。

 田畑の広がる農村地帯を訪ね、自治会長の男性に会うことができた。見せてくれた規約には、こう書かれている。

 《本会に入会を希望する者は、加入基本金10万円/1戸当たり、下排水費5万円/1戸当たりを添え、入会申込書を提出するものとする》

 男性によると、転入者の入会には、まず加入基本金10万円が必要になる。さらに、集落に公共下水道が整備されていないため、生活排水を流す河川の保護に充てる下排水費5万円も、新築物件の入居世帯から徴収している。規約は1988年に定められたという。

 合わせて15万円。引っ越したばかりの世帯にとって負担は大きい。集めた会費はどう使うのか。男性は「自治会には多くの資産がある。維持管理や改修のために会費を積み立てています」と説明した。

 この自治会は、子ども会や老人会の集まりで使う独自の公民館や運動場、公園、神社を所有しており、将来的な改修や補修に備えているという。「公民館は30年ほど前、昔から住む人たちが建設費を出し合って造った。新たな転入者にも公平に負担を求め、施設を使ってもらっています」

 自治会に入らなければ原則、こうした施設を使う権利はなく、自治会と連携する子ども会活動にも参加できない。子どもの交友関係に影響しないか、と心配になるのが親心だろう。

 社会教育法では、地域の学習、交流拠点となる公民館は「市町村が設置する」と定められている。行政はどう考えるのか。

 糸島市は小学校区ごとに15の公民館を設置している。一方、自治会は市内に160以上あり、それぞれに高齢者サロンやサークル活動に使う公民館を整備するのは難しい。「地域の活動拠点に使う集会所であれば、自己資金で建ててもらっている」と担当者。市は自治会の公民館建設に補助金を出し、対応している。

 法律に照らしてどうなのか。文部科学省は「自治会が所有するのは、公民館に類似する『自治公民館』に当たる」(地域学習推進課)として問題ないという。

 自治会長の男性は話した。「校区に一つでは他の自治会と取り合いになるし、災害時には避難所にもなる。高齢者にとって近くに公民館があった方がいい。市が財政的に厳しいのは分かるし、自分たちで造るしかない」。入会金に関する不満は聞いていないという。

 取材を進めると、驚くべき自治会ルールは、他の地域にもあった-。

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自治会多用なルール 「故郷基金」で神社を改修 「出不足金」女性だけ徴収

 自治会への入会金が10万円-。全国自治会連合会(事務局・福島県)の担当者は「それほどの高額は聞いたことがない」と驚くが、自治会が住民から集めた資金で公民館を整備する事例は、全国的にあるという。

 兵庫県南西部の町にある自治会では、「故郷(ふるさと)基金」という名称で、公民館の建て替えや神社の改修費として毎年3万円ずつ、10年間にわたって徴収している。住民の負担は、毎月の会費や雑費も含めると総額年5万円近くに上る。

 無料通信アプリLINE(ライン)を通じ、特命取材班に情報を寄せた自治会員の男性(50)は首をかしげる。「高齢者が増え、公民館の使用が減っているのに、新築する必要があるのか。神社の改修も特定の宗教のための出費で、おかしい」。それでも毎年、支払っているという。「釈然としないが、支払いを断れば集落に居づらくなるから」

      ■

 自治会の歴史は古い。

 山梨学院大の日高昭夫教授(自治体行政学)によると、自治会、町内会の組織は全国に約30万団体ある。団地や新興住宅街を除くと、その多くは江戸時代の村落共同体にルーツがある。

 1889(明治22)年の自治体の大合併などをきっかけに、村落共同体はより規模の大きい町村に統合された。村落共同体は公的には姿を消したが、道路や水の管理、神社の整備などを担う任意の住民組織として存続。戦時下には国策を浸透させる末端機構としても働き、現代まで自治会、町内会として続いているという。

 「自治会は、財源も人手も乏しい行政運営を補完してきた。住民同士の自治を掲げる一方で、行政への協力機能も果たし、二面性のある組織です」と日高教授は語る。

 現在では地域のレクリエーションや清掃など幅広い活動を担う。災害発生時の住民の安全確認など、自治会が果たす役割は大きい。

 福岡市中央区の町内会でつくる簀子(すのこ)自治連合会は、1世帯当たり月300円程度の会費を財源に防犯カメラや防犯灯を設置し、会員有志が見回り活動をしている。田上稔会長(76)は「行政は事件が起きてからでなければ動かない。うちは向こう三軒両隣で地域を守っており、会費以上のメリットがある」と強調した。

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 問題は、自治会の実情が地域外から見えにくい点だろう。国、自治体は、行政の補完的存在として自治会に頼りつつも、住民の自主運営という建前上、「個々の活動は把握していない」(総務省)との立場。結果的に“野放し”になっている側面があり、一部の自治会に古めかしい独特のルールが残っている。

 「女性だけに出不足金を課す慣行がある自治会があり、不当な性差別だ」

 福岡県久留米市には10年ほど前から、自治会の清掃活動などに参加しなかった人に支払いを求める「出不足金」を巡る苦情が相次いでいる。

 市が2010年に行った調査によると、自治会の共同作業に女性が参加した場合、「男性のように力仕事ができないから」と、出席しているのに出不足金を課す自治会が11団体あった。ある自治会では、会員が共同作業を欠席した際に1世帯当たり2千円、たとえ出席していても女性の場合は千円を徴収していた。

 苦情を受けて市が何度も是正を求め、9自治会は男女格差を撤廃したが、2自治会は拒み続けた。現状は把握できていないという。

 「地域分権時代の町内会・自治会」の著書がある名古屋大の中田実名誉教授(社会学)は「少子化や人口減が進み、自治会の加入率は全国的に下がっている。時代に合わない慣例は見直し、高齢で収入の少ない人に会費の減免制度を設けるなど工夫も必要だ。柔軟に運営しないと、脱会者が増えて先細っていく」と指摘した。

=2019/01/30付 西日本新聞朝刊=

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