「警官執筆料」解明遠く 無許可副業、文書流出…国会で野党が追及 「確認中」繰り返す幹部

 警察庁と17道府県の警察官が、昇任試験の対策問題集を出版する「EDU-COM」から原稿執筆料を受け取っていた問題が8日、国会で初めて議論された。山本順三国家公安委員長は「早期に事実確認し、適切な対処がなされるよう警察を指導する」と述べたものの、警察庁幹部は「事実関係を確認中」と繰り返すばかり。無許可副業や内部文書流出、飲食接待…。次々と明らかになった問題に、野党議員は追及を強めた。

 「警察の信頼に関わる。全面的に明らかにすることが必要だ」。衆院内閣委員会で質問に立った共産党の塩川鉄也氏は調査状況をただした。山本氏は「一部の県警では既に事実確認を終了し、かなりのものは問題のないケースに当たると考えるが、さらに確認を要すると認められる点もある」との認識を示した。

 警察庁の中村格官房長の答弁によると、調査は「EDU-COM」の支払いリストに記載された467人全員が対象で、項目には執筆料を適切に税務処理したかも含まれる。所得税法で給与以外の所得が年間20万円を超えた場合、確定申告が必要となるからだ。

 取材に対し、複数の警察官は執筆のきっかけを「警察庁に出向中、上司のキャリアから頼まれた」と証言した。この点について中村官房長は「職場の上司から職務命令という形で、組織的に原稿執筆の依頼やあっせんが行われたという事実は把握していない。個人的な関係で他の職員に依頼したということが多々あった」と説明した。

 公務員の副業は原則禁止されている。中村官房長は「(違法な)兼業に該当するか事実関係を確認中だが、一概に当たるというのは困難だ」と述べた。塩川氏は1500万円超を受け取ったとされる大阪府警の警視正を例に挙げて追及。これに対し、「事実関係を確認しないと判断がつかない」と釈明した。

 一方、同社に取扱注意を含む警察の内部文書が流出した疑いについては「網羅的に把握しているわけではないが、確認した限りにおいては、公務員法上の守秘義務違反に当たるような秘密が含まれる文書はなかった」とした。

 ただ、河北新報(仙台市)は、宮城県警の警視正が同社に提供したとみられる文書を開示請求したところ、一部が黒塗りで開示されたと報じた。「報道が事実であり、かつ職員からその文書が出たという事実確認ができたとすれば文書管理規定などに抵触する恐れはある」と語った。

 問題が報道で明らかになってから2カ月がたった。調査結果の公表時期を迫る塩川氏に、中村官房長は「現時点で事実確認の終了の確たる時期を申し上げるのは不可能」と述べるにとどめた。

■徹底した調査を

 西日本新聞などが1月8日付の朝刊で一連の問題を報道してから2カ月。依然、警察庁は「事実関係を確認中」と繰り返し、調査終了の見通しについても明言を避ける。

 8日の衆院内閣委員会で、山本国家公安委員長は「かなりのものは問題のないケースだった」との認識を示した。だが、警察官が昇任試験対策問題集の設問や解答を無許可で執筆し、現金を得ていたことが本当に問題はないのか。多くの識者は「悪質な小遣い稼ぎ」と批判しており、即刻、執筆をやめさせるべきだ。

 「EDU-COM」の支払いリストに記載されていた467人のうち、36人は年間を通じて執筆料を受け取っていた。最高額は大阪府警の警視正で1500万円超、1カ月の最高額は137万円に達していた。一部の警察官は同社に膨大な数の内部資料も流しており、癒着の構図がうかがえる。

 警察庁は同社からの飲食接待疑惑を否定したが、警察幹部の1人は取材に対し、執筆者として部下を紹介した見返りに接待を受けたことを認めた。内部資料には「ビール券を渡し済み」との記述もあった。

 同社にも調査協力を求めるとするが、警察庁は問題をうやむやにすることは許されない。西日本新聞には複数の現職警察官から「ほかの出版社でも同様の執筆が行われている」との情報提供もある。徹底した調査を望む。 (社会部特命取材班)

【ワードBOX】警察官執筆料問題

 警察庁と17道府県の現職警察官らが、昇任試験対策問題集を出版する「EDU-COM」(東京)から原稿執筆の依頼を受け、現金を受け取っていた問題。同社が作成した資料には、2010年1月~17年3月までに、警察官467人に計1億円超の執筆料が支払われたと記載されている。同社には「取扱注意」を含む警察の内部文書数千点が流出していたことも判明している。地方公務員法や国家公務員法の無許可副業や守秘義務違反などに当たる可能性がある。

=2019/03/09付 西日本新聞朝刊=

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