松雪泰子主演「この熱き私の激情」 25日から北九州芸術劇場で上演

7人のキャストがそれぞれの部屋で演技を繰り広げる「この熱き私の激情」(北九州芸術劇場提供、撮影・阿部章仁)
7人のキャストがそれぞれの部屋で演技を繰り広げる「この熱き私の激情」(北九州芸術劇場提供、撮影・阿部章仁)
写真を見る

女性の生きる痛み描く

 36歳で命を絶った実在の作家をモデルに女性の生きる痛みを描く舞台「この熱き私の激情」が25、26日、北九州市小倉北区の北九州芸術劇場で上演される。松雪泰子ら女優6人とダンサー1人が魂を絞り出すような熱演で一人の女性の内面を浮かび上がらせる。

 原作はカナダ出身の女性作家ネリー・アルカンの自伝的小説「ピュタン」など。アルカンは高級売春婦のアルバイトなど自身の体験を基にした著作や美しい容姿が注目を集めてベストセラー作家となったが、2009年、自宅で自殺。その生涯をカナダ人演出家マリー・ブラッサールらが演劇としてよみがえらせた。

 幕が開くと、10の箱を2段に組み合わせた巨大な舞台装置が現れる。うち六つの箱に女優が1人ずつ入り、ほぼ出ずっぱりで物語は進んでいく。

 「時間軸に沿った伝記風の平板な芝居では彼女の複雑な内面を表しきれない」というブラッサールの言葉通り、決して分かりやすいストーリーではない。

 冬景色を背景に暖炉といすだけがある「影の部屋」、公衆トイレを模した「天空の部屋」、男を迎えるための薄汚れたベッドがある「血の部屋」…。それぞれの部屋が表すのは、アルカンの心象風景であり、彼女を追い詰める痛みである。

 少女時代のつらい記憶、男の慰み者として扱われるむなしさ、外面にとらわれるが故の老いへの恐怖。一人の女性が抱くさまざまな苦悩を、6人の女優が現代ダンスのような動きやメロディーに乗せた節回しで表現。ダンサーの奥野美和は時に彼女たちに痛みを与える男として、時には彼女たち自身の影として、空間を自在に行き来する。

 部屋の前面を覆う透明ガラスは、自らを映し出す鏡や社会との壁を暗示する。アルカンは生前、元売春婦というレッテルや外見ばかり注目されることに苦しみ続けた。一方で、自らも「若くなければ無価値」という考えに縛られていたという。ガラスは、アルカン自身が作り出したものでもあったのでないか。

 それにしても、極限まで肢体を使い、喉をふるわせる演者たちが美しい。「女性の美」とは何か。深く考えさせられる舞台である。

 ◆この熱き私の激情 25日午後6時半、26日午後1時。全席指定、前売り9千円(当日9500円)、学生4千円。ピクニックチケットセンター=050(3539)8330。

=2017/11/20付 西日本新聞夕刊(娯楽面)=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]