左手だけの音楽世界、無限大 ピアニスト舘野泉 22日に福岡公演

現在、81歳。「朝起きて1音たたくと俺は生きているんだという感じを持つ」と語る舘野泉
現在、81歳。「朝起きて1音たたくと俺は生きているんだという感じを持つ」と語る舘野泉
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「独自の響き作れる」

 フィンランド在住のピアニスト舘野泉が左手だけで演奏するようになって15年近くが過ぎ、その間に内外の作曲家がクラシック界の大御所のために書いた曲は間もなく100曲に届く。独奏曲にとどまらず、舘野が注文を出し、協奏曲、器楽曲とジャンルは幅広い。舘野は「左手だけで十分な独自の響きの世界が作れる」と語り、その多彩な世界を紹介するツアーに18日から臨む。

 福岡など5都市を回るツアーには、イスラエル出身の国際的ビオラ奏者ユバル・ゴトリボビチが出演し、彼が作曲したビオラソナタなどで共演する。

 「ビオラは積極的に表に出るタイプの楽器ではないけれど、音楽的に含みのある世界をもたらす。なのに作品が少ないのは惜しい」と舘野が依頼してソナタが誕生した。昨年11月、東京で開催した誕生日記念の演奏会で今井信子を迎えて初演しており「難しいが素晴らしい曲。作曲家本人との演奏が楽しみ」と語る。

 もう一つ目を引く曲は熊本市在住の作曲家光永浩一郎の作品。「光永さんの作品はピアノが好きでしょうがないというのが手に取るように分かる。てらいがなく、美しく豊かに楽器を響かせる」と高く評価する。

 光永が舘野のために書いた曲は8作品。舘野は昨年9月にヘルシンキでピアノ協奏曲「泉のコンセール」を初演するなど積極的に光永作品を紹介している。ツアーではギターの名曲「アルハンブラの思い出」やドビュッシーへのオマージュを込めた組曲「オルフェウスの涙」を取り上げる。

 当日はこのほか、池辺晋一郎、谷川賢作、アイスランドの作曲家ソールデュル・マグヌッソンと、近年作がプログラムに並ぶ。

 2002年に脳出血で倒れ右半身不随になりながらもステージに復帰、懇意な作曲家に曲を依頼し続け、未開拓だった世界を切り開いてきた。

 「左手の曲の難しさはどこに旋律が出てくるか、きちんと伝えられるか。指が回ってもしょうがない」

 今回のプログラムを見ただけでも一つのジャンルを確立した感がある。左手、両手の曲の違いを聞くと「具体的には言えない」と首をひねり、「神様から『右手を戻してやるよ、両手で弾け』と言われても断ります。左手で十分」と言い切った。

 ◆舘野泉ピアノリサイタル 22日午後7時、福岡市中央区舞鶴2丁目、あいれふホール。入場料4500円。エムアンドエム=092(751)8257。

=2018/05/12付 西日本新聞夕刊=

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