メディアと政権の関係問う 劇団二兎社の新作「ザ・空気ver.2」

「こういう時代に生きてるんだ、という思いを観客と共有していきたい」と語る永井愛
「こういう時代に生きてるんだ、という思いを観客と共有していきたい」と語る永井愛
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 劇作家・演出家の永井愛が主宰する二兎社(にとしゃ)の新作「ザ・空気ver.2 誰も書いてはならぬ」が東京芸術劇場で上演され、話題を集めている。前作の「ザ・空気」に続き報道の自由がテーマだが、今回は「メディアと政権の関係」に切り込んだ。現在の政治状況を投影した意欲作である。

舞台は国会記者会館

 永井は社会性の強いテーマの選択と掘り下げぶりに定評がある作家だ。前作はテレビ局の報道番組の制作現場が舞台で、上層部の意向が局内の空気を支配し、報道内容が自己規制されていく様子を描いた。第25回読売演劇大賞の最優秀演出家賞を受賞するなど、高い評価を得た。

 今回の舞台は、国会や首相官邸に隣接する国会記者会館の屋上だ。大手新聞社や放送局の記者が、首相会見の直前に見つかった「Q&A(会見の模範解答)」の作成者捜しを始める。そこに部外者であるネットメディアのジャーナリスト(安田成美)がいたことから、話は複雑に展開していく。

 この脚本は実際の出来事をモデルにしている。森喜朗政権時代の2000年、官邸記者室で首相に記者会見の切り抜け方をアドバイスする「指南書」が見つかった。発見した西日本新聞記者が記事化して明らかになったが、権力との緊張関係を失った一部メディアの姿勢が批判を呼んだ。

 永井はこの作品に込めた問題意識をこう語る。

 「日本のメディアと政権の関係にはおかしなところがいろいろある。例えば、メディアの幹部が政治家と高級レストランで会食するとか、担当する政治家が出世すると番記者の社内的なポジションも上がるとか」

 「そうした状況下で、メディアは本当に国民の判断の基になる情報を提供しているのか。むしろ政権が出したがっていることを報じているだけではないか。その癒着の根幹に、日本独特の記者クラブ制度があると考えた」

 作品は現政権下で進むメディアの「政権寄り派」と「政権批判派」との分断も浮き彫りにしている。シリアスな主題を笑いも交えて描く永井の手腕がさえる。笑った後で再び考えさせられる芝居である。

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 出演は安田のほか、松尾貴史、真島秀和、馬渕英里何ら。東京・池袋の東京芸術劇場シアターイーストで16日まで。その後、全国各地を巡演し、九州では8月25、26日に北九州芸術劇場(北九州市小倉北区)=093(562)2655=で上演。

=2018/07/12付 西日本新聞夕刊(娯楽面)=

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