鈴木浩介が初主演「消えていくなら朝」 「うそのない芝居を」

「消えていくなら朝」で5年ぶりに帰省する劇作家を演じる鈴木浩介(撮影・谷古宇正彦)
「消えていくなら朝」で5年ぶりに帰省する劇作家を演じる鈴木浩介(撮影・谷古宇正彦)
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 北九州市出身の俳優、鈴木浩介(43)が初めて主演する舞台「消えていくなら朝」が12日、福岡県新宮町の「そぴあしんぐう」で上演される。海辺の家を舞台に、18年ぶりに顔をそろえた家族を描く密室劇。俳優6人が2時間出ずっぱりの濃密な芝居に、俳優陣、脚本、演出それぞれの技がさえる。

言葉に命を吹き込む家族劇 リアルに

 「ドクターX」「昼顔」など人気テレビドラマで名脇役として知られる鈴木だが、もともとは劇団青年座出身。小学生の時に西田敏行が出演するドラマを見て衝撃を受け、西南学院高(福岡市)を経て上京。大学2年で休学して当時西田が所属していた青年座の門をたたいた。「子ども心に、この人は芝居じゃなくてほんとにそこでしゃべってると思った。西田さんに会いたい一心でここまできた」と笑う。

 今作で演出を務める宮田慶子も青年座出身で、ともに仕事をするのは十数年ぶりとなる。脚本の句読点まで大切にし、登場人物それぞれの背景を掘り下げる演出。「芝居のいろはを教えていただいた宮田さんに、今も同じことを学んでいる」とうなる。

 主人公は鈴木演じる劇作家の定男。恋人を連れて5年ぶりに帰省した定男だが、両親は離婚危機に。定男の職業を快く思わないサラリーマンの兄(山中崇)、40歳を超え独身の妹(高野志穂)とも久しぶりに顔を合わせる中、定男はこの家族を戯曲として書くと宣言。それぞれが家族に抱く不満があらわになっていく。

 「久しぶりに帰ると自分の居場所ってもう実家にない。そんな居間のどこに座るか、どういうふうにいればいいのか。稽古では台本には書かれていない細かいことを宮田さんと話しながら見つけていく作業だった」

 脚本は気鋭の劇作家、蓬莱(ほうらい)竜太。「……」という無言の多用や「え。え(笑)」など独特のせりふ回しが今作でもふんだんに使われている。「たとえば『ホッント、に何なの……?』というせりふも句読点の位置まで忠実にやっている」。その細かい制約の中で、いかに役として生きるか。共演者の反応を受け止めながら言葉に命を吹き込む作業は、毎回が真剣勝負だ。

 「僕の演技はほぼ毎日違うと思う。同じ定男は一回もない」。それは少年時代、西田さんの演技にみた「うそのない芝居」に通じる。

 「100人いれば100人、感じ方が変わる作品。家族の背景にちりばめられた共感できるところを見つけてほしいですね」

 ◆消えていくなら朝 12日午後1時開演。チケットは前売り4500円(当日500円増)。そぴあしんぐう=092(962)5555。

=2018/08/09付 西日本新聞夕刊(娯楽面)=

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