「こらっ! 危ないやろが。あっち行って遊ばんか」

 「こらっ! 危ないやろが。あっち行って遊ばんか」。1995年の阪神大震災で被災した神戸市で4月、当時のことを取材中に相手の86歳の男性が突然、怒鳴った。視線の先には、男の子。交通量の多い車道に転がったボールを取りに行こうとしたようで、引きつった表情で「ごめんなさい」と謝った。

 取材した地域は、かつて古い長屋や零細工場がひしめいた下町で、地震による火災で多くの建物が焼失した。人口は地震前より3割も減り、大人の目が子どもの遊び場から遠ざかっているという。「だから危ないことは厳しく教えるんや」と男性は言った。

 今やほとんどお目にかからないが、男性はいかにも「雷おやじ」。口やかましいが、愛情がある。子どもたちにとって今は怖いだけの存在でも、その優しさが分かる日が来れば、人口減や記憶の風化などの課題に挑む人材に、きっとなるだろう。そう期待したい。 (原田克美)

=2018/06/12付 西日本新聞朝刊=

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