政治は被災地を泣かせるな

 熊本地震から1年が過ぎた。熊本の復興を自分のことのように気遣ってくれる地域がある。東京電力福島第1原発事故から6年で福島県内を取材した際「九州の新聞記者」を名乗ると、異口同音に熊本地震のことを尋ねられた。

 同時に「今村雅弘復興相ってどんな人なのか」とも聞かれた。今年1月に福島市であった福島復興再生協議会で、今村氏は「復興はマラソンに例えると30キロ地点」と楽観的過ぎる発言をして、地元のひんしゅくを買っていた。質問には、今村氏は佐賀県出身で現在は比例代表九州ブロック選出と無難な返答をしたが、福島の人たちの今村氏に対する懐疑的な視線を感じた。

 今村氏はその後も福島を失望させている。避難指示区域以外でも放射線への懸念などから自主避難している住民について、テレビ番組で「古里を捨てるのは簡単だ」と言い放ち、先日の記者会見でも自己責任論を振りかざした。今村氏は謝罪して発言を部分的に撤回したが、それで済む問題ではあるまい。

 福島を落胆させるのは今村氏だけではない。安倍晋三首相は今年の東日本大震災追悼式の式辞で初めて原発事故の文言を使わなかった。3月11日か10日に慣例化していた記者会見もしなかった。

 今村氏の前任だった高木毅氏は自らの政治資金問題などの釈明に追われ、復興に専念できなかった。福島の疑念は今村氏にとどまらず、政治そのものに向けられている。

 福島で取材した首長の一人は「政府は後ずさりしている」と肩を落とした。10年の時限立法で設置された復興庁はあと4年で消える。しかし、第1原発は廃炉まで最大40年かかるとされ、除染で出た放射性廃棄物の県外最終処分場のめども立っていない。

 原発事故は終わっていないのに政治は腰を引き始めている‐そんな疑いを確信に変えるような政治家の言動が福島を泣かせる。その光景を見た全国各地の被災者はどんな思いを抱くことか。「寄り添う」べき被災地を政治が泣かせてはならない。


=2017/04/16付 西日本新聞朝刊=

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