こんな国会議員がいた

 山本孝史という政治家を覚えておられるだろうか。2006年5月、参院本会議の代表質問で、自らがんに侵されていることを告白しつつ、がん対策基本法の早期成立を訴えた国会議員である。

 山本さんは交通事故遺児支援活動から政界入りし、日本新党、新進党、民主党(当時)で衆院、参院議員を務める間、児童扶養手当拡充や薬害エイズ、年金など数々の社会問題に取り組んだ。

 05年に胸腺がんが判明したが、がん対策基本法と自殺対策基本法の制定に奔走。「がん告白演説」が各党を動かし、06年に両法は全会一致で成立した。山本さんは07年、58歳で亡くなった。

 山本さんの活動の原点は、5歳のとき兄を交通事故で亡くしたことだ。「救える命は救わねばならない」。それが一貫したテーマだった。

 没後10年と両法の施行10年を記念し、今月11日に東京・渋谷で山本さんの生涯を描いた朗読劇「兄のランドセル」が上演された。広いNHKホールがほぼ満員だった。

 山本さんの追及を受ける側だった尾辻秀久元厚生労働相(自民)も登壇し「困っている当事者の気持ちになれる人だった」と故人をしのんだ。

 私が国会を取材していた20年ほど前、山本さんはまだお元気で、有名でもなかったが、国会関係者や記者の間では既に「知る人ぞ知る」存在だった。真面目さと熱心さが際立っていたからだ。委員会での質問を聴きつつ「地味だけど良い議員がいるなあ」と感心したことを思い出す。

 最近、自民党の部会で「(がん患者は)働かなくていい」とやじを飛ばした議員がいた。山本さんという先達がいたことを知らないのだろうか。国会では乱暴な議事運営がまかり通り、議員の質の低下も懸念される昨今だ。

 しかし「地味だが真面目に、大事なテーマに取り組んでいる」議員は、今もきっといるはずだ。そんな議員を見つけ、報じることで、荒れた政治を立て直すことはできないだろうか。そんなことを考えている。


=2017/06/18付 西日本新聞朝刊=

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