雨がほお濡らす野宿の夜

 髭戸太(ひげとふとし)さんは、福岡市・天神の街角で雑誌「ビッグイシュー」を販売していた。

 ホームレスの人たちが売って収益を得る、自立支援のための雑誌である。髭戸さんは一枚の紙に川柳を書いて「付録」として添えていた。

 〈老猫と日がな一日ベンチかな〉。クスッと笑って、切なくなる。川柳目当ての常連客も多かった。

 髭戸さんを見かけなくなって7年ほどになる。福岡市内の販売者は1人、2人と減り、2年前にいなくなった。自立がかなったのだろうか。

 ホームレス自立支援法施行から、この夏で15年になる。国と自治体が民間支援団体と連携し、就労支援や住宅確保に取り組んできた。

 厚生労働省によると、2003年に約2万5千人だったホームレスの人たちは今年1月時点で5534人に減った。九州7県は331人で、うち270人が福岡にいる。

 青空が広がった今月13日、福岡市博多区の美野島公園に三々五々、人が集ってきた。ホームレス支援を続けるNPO法人・美野島めぐみの家(瀬戸紀子理事長)が毎週火曜日の昼間、ここで炊き出しをしている。

 めぐみの家は自立支援センターや複数の民間支援団体と連携を深めてきた。「自立に向けて、いろんな機関につなぐ態勢が整ってきた」と瀬戸理事長は語る。

 炊き出しに集まる人は09年3月の300人超をピークに減少した。とはいえ、本年度に入っても毎回、40人前後の野宿者が来場している。

 セーフティーネットからこぼれ落ちる人は後を絶たない。景気が後退すれば、増加に転じる恐れもある。

 時限法である自立支援法を夏から10年間延長することが先週、国会で決まった。官民一丸となった自立支援を息長く続ける必要がある。

 炊き出しのカレーを食べた人々が美野島公園を去る。今夜のねぐらはどこだろうか。梅雨の晴れ間も長くは続くまい。〈夜に雨深い眠りの頬(ほお)濡(ぬ)らす〉(髭戸太)。


=2017/06/19付 西日本新聞朝刊=

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