選挙の怖さも喉元過ぎれば…

 選挙は怖い。世論と向き合っているはずの政党や候補者が世論を甘くみると、選挙戦の流れどころか結果まで一瞬で変えてしまうことがある。東京都議選もそうだった。

 投票日の1カ月ほど前に会った自民党幹部は「第1党を維持する可能性が見えてきた」と余裕の表情だった。報道各社の「投票まで1カ月」の世論調査が意外なほど自民党に良かったからだ。

 共同通信社の調査でも、投票する政党として最多は自民党の17%で、小池百合子都知事率いる地域政党「都民ファーストの会」の11%を大きくリードしていた。

 告示の10日ほど前から情勢が変化する。何があったのか。「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が採決強行で成立した。「加計(かけ)学園」の獣医学部新設で官邸の関与を疑わせる文書が確認されたのに、政府は説明責任を果たさず国会を閉じた。

 閣僚や若手議員の問題発言や暴言が続いた。選挙戦の最終盤に安倍晋三首相が街頭演説で、抗議する市民を「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と挑発したのが決定打だったか。自民党は歴史的惨敗を喫した。

 国政選挙4連勝、首相在任が戦後3番目の長期政権、野党の低迷といった「1強」の政治状況は、党全体に「このぐらい大丈夫」という過信と誤解を生んだのだろう。

 惨敗を受けて首相は「厳しい叱咤(しった)と深刻に受け止め、深く反省しなければいけない」と述べた。自民党は加計学園問題を巡る衆参両院の閉会中審査に続き、拒み続けていた首相出席の予算委員会集中審議にも応じる意向を示した。

 しかし閉会中審査で周知の経緯を延々と話した山本幸三地方創生担当相の姿勢を見れば反省の本気度も疑わしい。真相解明より、来月初めに予定される内閣改造の前に「幕引き」を図る思惑らしい。

 2度の下野をはじめ選挙の怖さを散々味わった自民党だが、喉元過ぎれば熱さを忘れる体質も健在なようだ。つい大目に見る私たち国民にも責任がある。


=2017/07/17付 西日本新聞朝刊=

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