「しがらみのなさ」に期待する

 福岡県太宰府市には今から約1300年前、九州全域を統括して外交や防衛など国家機能も担う「大宰府」が置かれた。「遠(とお)の朝廷(みかど)」と呼ばれるゆえんだ。

 市長不信任決議、議会解散による市議選、2度目の市長不信任決議、市長失職に伴う市長選…。いにしえの「西の都」という看板が色あせてしまう混乱ぶりだった。

 市長選で無所属新人の元衆院議員楠田大蔵氏(42)が初当選した。一刻も早く市政を正常化し、市民と行政、議会が一体となってまちづくりに臨む態勢を整えてほしい。

 太宰府天満宮や九州国立博物館がある太宰府市には年間約900万人の観光客が訪れる。だが天満宮周辺に集中し、市全域への波及効果は薄い。慢性的な道路の渋滞も含め大きな課題となっている。

 市政混迷の発端となった中学校の完全給食に代表されるように「近隣自治体と比べ市民サービスが貧弱」との声も市民の間には根強い。他にも子育てや高齢者支援など懸案は山積している。問題の解決に向け重要なことは、いかにして市民をまとめるかだ。

 市制施行前の太宰府町は旧太宰府町と水城村が合併した経緯から、旧町村を二分する町長選が展開されて大きなしこりが残った。

 今でも旧町村の地域対立は根強いとされる。合併時約1万3千人の人口は福岡都市圏のベッドタウンとして新住民も増え、現在は7万人を超えた。市民はそれぞれの立場から市政にさまざまな不満を抱いている。

 それに加えて前市長と議会の対立だ。これではまちづくりが前に進むはずもない。

 楠田氏は太宰府市に隣接する福岡県筑紫野市出身だ。地元出身で政党推薦も受け、市内の多くの団体から支援された前市教育長に勝利したことは何を意味するのか。それだけ市政の変革を望む市民の声が強かったということだ。

 楠田氏は選挙戦で「しがらみのなさ」を強調した。市民の声に耳を傾け、若さと行動力で大胆な市政改革に取り組んでほしい。

=2018/02/12付 西日本新聞朝刊=

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