教訓に満ちた「日本沈没」

 映画「日本沈没」(小松左京原作)が封切られたのは1973(昭和48)年だった。先日放映された衛星放送を録画し、自宅で鑑賞した。

 見応えのある作品だ。単なるSF娯楽ではなく人間ドラマも描き切っていて、2時間余り画面に引き込まれた。

 映し出されるのは、東京大地震と各地の巨大津波、富士山噴火である。最後に日本列島は海に引き込まれ、沈んでいく。特撮も秀逸だ。

 それでも45年前なら「大げさな」と思っただけかもしれない。今は違う。その光景は強い既視感がある。

 平成に入り、高速道の崩落や火山噴火は阪神大震災や長崎県の雲仙・普賢岳でまざまざと見せつけられた。映画は専門家による科学的考証がなされているのだという。

 強いて言えば、大津波は映画のように高い弧を描かない。無表情に水かさを上げながら、圧倒的な力で押し寄せることを、東日本大震災が教えてくれた。

 映画は小説とともに大ヒットした。73年といえば、第1次オイルショックでトイレットペーパー騒動が起きた年だ。公害もまん延し、それまで高度成長に沸いた日本の社会を不安が覆った。そんな時代背景がある。

 ところが今、インターネット通販で映画はDVDとして根強い人気だ。口コミ評価の欄を見ると、私と同じ感想が多くつづられている。

 平成は災害の活性期と重なったといわれる。平穏期だったとされる昭和の後半では、映画ほどの災害は実感できなかっただろう。「沈没」の可能性はともかく、SFは現実に近づいたのだ。

 迫り来る危機にどう対応するのか。映画では、学者らが示す一案に、首相(丹波哲郎)がこう言って涙するシーンがある。「もうこのまま何もせん方がいい…か」

 もちろん現実ではそうはいかない。平成の先はどうなるのだろう。私たちは実際に経験した災害から教訓を学ぶが、45年前に公開されたSF映画が暗示するものにも教えられる。

=2018/02/13付 西日本新聞朝刊=

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