「黒塗りメーク」論議に思う

 「駅で乗車マナーの向上を呼び掛けるポスターが並んでいたが、迷惑行為をする乗客の顔が黒塗りばかりというのは安易過ぎないか。黒人差別や偏見につながりかねない」

 予想外の問い掛けに答えを探しあぐねた。5年ほど前、九州大に本紙寄付講座の教員として出向していた際、海外生活の長い研究者から顔を黒く塗ったポスターについて見解を求められたことがある。

 反省を込めて記憶がよみがえったのは、昨年12月31日放送の「ガキの使い!大晦日(おおみそか)年越しSP絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時」(日本テレビ系)という番組をきっかけに、黒塗り(ブラックフェース)メークが議論を巻き起こしているからだ。

 番組では人気お笑いコンビ「ダウンタウン」の浜田雅功さんが黒塗りで登場した。これに在日13年になる黒人作家バイエ・マクニールさんが「黒塗りメークは世界では人種差別行為だ」と指摘した。

 19世紀米国で黒塗りした白人が黒人を笑いものにした大衆演劇「ミンストレル・ショー」など差別史を示して「ブラックフェースが笑いの種として使われる場合、暗黙の偏見を助長する」(東洋経済オンライン)と問題提起した。

 一方、ネット空間は「被害妄想だ」「日本のお笑い文化が分かっていない」などマクニールさんへの批判で沸騰している。「嫌なら日本から出ていけ」といった排外的主張もある。残念な反応だ。

 私もかつて、研究者の問い掛けに「ポスターは黒人を象徴するわけではない。考え過ぎではないか」と認識不足の回答でお茶を濁そうとした。

 ポスターとテレビ番組の違いはあるだろう。ただ制作意図は別にして黒い顔を負の印象につなげていると思われても仕方ない点は変わらない。

 欧米では東洋人に似せる「イエローフェース」も物議を醸す。差別の残酷な歴史を「知らなかった」では済まない。相手の立場を私のこととして考えることは簡単そうで難しいが、差別や偏見をなくす最短距離であることを肝に銘じたい。

=2018/02/18付 西日本新聞朝刊=

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