大牟田市動物園の獣医師、森田藍さん 好調な集客を陰で支え [福岡県]

ウサギにマッサージをする獣医師の森田藍さん
ウサギにマッサージをする獣医師の森田藍さん
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雌ライオンのしっぽに指を当て、採血練習のハズバンダリートレーニングを行う森田さん(中央)
雌ライオンのしっぽに指を当て、採血練習のハズバンダリートレーニングを行う森田さん(中央)
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 動物の魅力を生かしたイベントや動物福祉を重視した飼育が注目を集め、2016年度に歴代3位となる入園者数約25万人を記録した大牟田市動物園。動物の健康状態に目を光らせ、陰で好調な集客を支えているのが、同園に2人しかいない獣医師だ。そのうちの1人、森田藍(らん)さん(29)に仕事のやりがいや魅力などを聞いた。

 -昨年春から市動物園で働いている。きっかけは?

 「獣医師になったのは2013年。最初の3年間は川崎市と東京の動物病院に勤めていた。もともと動物園で働くことに興味はあったが、動物園獣医師はなかなか空きが出ないので狭き門。動物病院にいた頃に求人が出ており、大牟田市動物園が興味深いことをやっているといううわさも聞いていた。実際に園長らとも会い、これまでの経験が生かせると思って決めた」

 -市動物園は健康チェックなどの際に動物に協力してもらうための「ハズバンダリートレーニング」が有名だ。

 「関東にいても、市動物園がトレーニングでいろいろな動物の無麻酔採血に成功している、といった話は知っていた。麻酔をかけての採血は動物への負担が大きく、1年に1回くらいしかできないが、大牟田では毎月採血ができていて健康管理に役立てられている。全国でも先駆けた取り組みで、積極的な情報発信がすごく先進的だと思った」

 -動物園獣医師の仕事は。

 「交通事故などで傷ついて保護された野鳥などの世話を担当している。獣医師には担当動物がおり、朝夕に餌を与えるほか、巡回して健康状態をチェックしている。ただ回るだけでは気づけないこともあるので、飼育担当者に調子を聞いて『ここが変だ』とか『ちょっと見てほしい』となれば、検査したり治療したりする」

 -動物にマッサージすることもあるとか。

 「昨年7月から、腰が悪くなった高齢のウサギにマッサージをしている。動物病院時代に犬をマッサージした経験があり、ウサギでもできるのではと思ったのがきっかけ。始める前に、帝京大福岡医療技術学部の理学療法の先生に相談し、やり方のアドバイスをもらった。もんだり、こすったりして筋肉をほぐすと、10日くらいで効果が出始めた。当初は毎日だったが、症状がかなり改善したので、今は現状維持のために3日に1回くらい行っている」

 -ハズバンダリートレーニングとの関わりは。

 「トレーニングは、ある程度の段階までは飼育担当者が行うが、実際の注射などは獣医師が担当するので、獣医師に慣れてもらうためにトレーニングに参加する。獣医師は2人しかいないので、どの動物でも採血できるようにしている」

 -実際に無麻酔採血をして感じたことは。

 「麻酔をかけていないライオンのしっぽを握っても、動かないというのは衝撃だった。これまでに実習で動物園に行ったこともあったが、ライオンにはなかなか触れられないと考えていた。それが、しっぽに針を刺しても全然逃げないというのは、すごいことだなと素直に思った」

 -園で働くやりがいは。

 「動物園に対するイメージは、動物を見て楽しむ場所というのが多いと思う。一方で、無麻酔採血などの取り組みに共感して見に来てくれる人も多くいる。例えば、動物の満足度を高める『環境エンリッチメント』という言葉になじみがなくても、動物に良いことをしているみたいだ、と一歩進んだ見方をしてくれている。そんな情報発信ができる環境が整っていることはすごくやりがいがある」

 -理想の獣医師像は。

 「動物園で働く上で、飼育している動物に健康で幸せに暮らしてもらうのが大前提。そこに獣医師として関わり、しっかりと健康管理する。それをできるだけ多くの人に発信し、動物と人との付き合い方、野生動物の現状などを少しでも考えてもらえるような獣医師になりたい」

=2017/04/15付 西日本新聞朝刊=

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