町民パワー心つかむ 大刀洗町ふるさと納税6倍増 一人一人が「生産者」 [福岡県]

田中照政さんの机といすは、日田杉の角材を組み合わせて合板にするところからすべて手作りだ。「ニスをべとっと塗るより、(木目の)地のままがいいねえ」
田中照政さんの机といすは、日田杉の角材を組み合わせて合板にするところからすべて手作りだ。「ニスをべとっと塗るより、(木目の)地のままがいいねえ」
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いすの背や足など、角のある部分は丁寧にやすりがけしてある
いすの背や足など、角のある部分は丁寧にやすりがけしてある
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仕事場にもサンキャッチャーを飾っている。4人の子を育てながら作る永冨佐織さん(左)は「この部屋にいるときは仕事って、子どもも分かるみたい」と話す
仕事場にもサンキャッチャーを飾っている。4人の子を育てながら作る永冨佐織さん(左)は「この部屋にいるときは仕事って、子どもも分かるみたい」と話す
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 大刀洗町へのふるさと納税による寄付額が急激に増えている。2016年度の8900万円を早くも6倍近く上回り、昨年末に5億2千万円に達しているのだ。加速する自治体間競争や高額すぎる返礼品の制限など、そのあり方が問われている、ふるさと納税。人口1万6千人弱の町が成功した理由の一つに、町民一人一人も「生産者」となって多彩な特産品をそろえ、寄付者の心をきめ細かにつかむ工夫があった。

 「ふるさと納税の返礼品というと、高級肉や米が連想されるけど、それだけじゃない。町の人が生活の中で生み出したものだって大刀洗の特産品。それを丁寧に発掘してきた」。町地域振興課の村田まみ自治振興係長が言葉に力を込める。

 町は、ふるさと納税を代行して受け付けるポータルサイト「さとふる」と連携し、2015年から3回、「よかもんさがし」のワークショップを実施。返礼品の主力である農作物に加え、町の良さを伝える特産品とはどんなものか、町民たちが町内の店を回ったり、話し合ったりしてきた。

 自宅の一室でアクセサリーを製作販売している永冨佐織さん(40)も参加者の一人だ。「ピアスやネックレスだと、女性対象に限られてしまう。みんなが使えるものは何だろう」。ワークショップを経て思い付いたのが、ビーズで作るお守りの「サンキャッチャー」だった。部屋の窓などにつり下げ、太陽を浴びて光り輝く飾りだ。

 返礼品の一つとして3千円相当の品を2015年から出品すると、年々寄付件数も増加。この1年で約70件を受け付けた。ある時、役場に寄付者の女性から「作り手の人と話したい」と電話があった。永冨さんが引き継ぐと、女性は「夫を海で亡くしたので、深い青のビーズは嫌なの」と相談を始めた。要望を受け、永冨さんは薄水色のビーズで作り、発送した。女性からは喜びのメールが届いたという。

 「全国各地に私の作ったお守りが広がるのは面白い。楽しんで作っています」と永冨さんはほほ笑む。

   ◇    ◇

 当初は孫のために作った品が、ヒットにつながった例もある。大工の田中照政さん(71)は仕事の傍ら、空き時間に木工品を作るのが趣味。町民が手作りの漬物や手芸品などを売る移動式直売所に出品していた。そこへ出していた子ども用の机といすのセットが好評で、返礼品として白羽の矢が立った。

 「仕事もあるし、たくさんは作れんと思ったけど、作れるしこ(作れるだけ)でよかって言うから」。町の担当職員とも相談し、返礼品用に机といすを改良。孫のために作った最初の品よりも多くやすりがけした。「けがせんごと、だいぶ丸くしたよ」と目を細める。

 その返礼品の人気ぶりには村田係長も驚いた。「昨年夏に初めて出品してあっという間に人気商品に。入荷してもすぐ寄付枠が埋まってしまう」。これまでに130件近くの机セットが工房から旅立った。「張り切って作っとるよ。お小遣いが入ったら孫にも何か買ってやれるしね」と田中さんは声を弾ませる。

   ◇    ◇

 「何が『特産品』なのか、切り口に困っている自治体もある中、大刀洗町は町民それぞれが『自分事』として特産品の発掘に取り組んでいる」。大刀洗町でのワークショップを担当してきた「さとふる」の担当者はそう強調し「一つの品で多額のふるさと納税を集めるのは大変。いろいろな人が関わった方が、いろいろな人(寄付者)の支持を得られる」と語る。

 ふるさと納税は6倍に増えたが、村田係長は「今年は想定以上の“お年玉”。寄付額は変動するもの」と冷静だ。使い道は来年度、町民参加型のワークショップで検討する構想があるという。「町民の皆さんの頑張りですから、皆さんで考えてもらいたい」。あくまでも町民が主役。大刀洗の取り組みは続く。

=2018/02/06付 西日本新聞朝刊=

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