医学生、獣医師、音楽プロデューサー 三足のわらじ人の心解放へ 久留米大医学部5年の岩嵜誉昇さん [福岡県]

音楽制作や選曲の際に愛用するヘッドホンとともに
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久留米大病院の総合診療棟前で
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音楽配信サイト「beatport」で発売されているTAKANORIさんの曲
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 医学生で、獣医師で、音楽プロデューサーでもある。一見全く異なる道のようでも、久留米大医学部5年の岩嵜誉昇(いわさきたかのり)さん(31)=久留米市=にとっては、ごく自然に選んできた道のりだ。「人とつながり、力になりたい」。その思いを形にするため、異色の歩みを進めている。

 超多忙の臨床実習の合間を縫い、岩嵜さんは5月3日、都内で開催される日本最大級のクラブイベント「ageHa」のアリーナステージに立つ。国内外のトップDJたちが観衆を沸かせてきた空間だ。「TAKANORIとして活動を始めたときから『いつかは』と思ってきた場所」。それでも気負いはない。いつものように、そこにいる人々の表情や空気を感じ取り、心を浮き立たせる曲をつなぐ。そして、自ら作曲とプロデュースを手がけた曲も流れに乗せ、快い風を吹かせる。

 岩嵜さんが選曲し、制作するジャンルは「ハウス」というクラブ音楽だ。強いリズムで客を踊らせる曲が多い中、岩嵜さんの音楽は美しい旋律と爽やかさが特徴。昨年11月、初のオリジナル曲「アンコンディショナル・ラブ」が世界最大級のクラブ音楽配信サイト「ビートポート」から発売されると、一時、人気ランク2位まで上昇した。「ダンスミュージックの垣根を越え、クラブの外の人にも喜んでもらえる音楽を」。5月5日にはJR博多駅のイベントで非日常の空間を音楽で演出する。

 都内で生まれ育ち、2014年、久留米大入学で福岡に移り住んだ。父親は大牟田市出身だが、自身の知人はいない新天地。「DJをやれば友達ができるかな」。ふと思い立ち、顔なじみになった福岡市内のサウンドバーでDJを始めた。音楽は、人と人との距離をあっという間に縮める。着々と人脈が広がるとともに、音楽性が評価され、東京のクラブでも活動するようになった。「人の曲だけでなく、自分の曲でも表現したい」。そう考えてつくった初めての曲が南フランス出身の音楽プロデューサーに認められ、昨秋の世界デビューにつながった。

 とんとん拍子の音楽活動の一方で、医学の道も見失いはしない。

 もともと、日大獣医学科を卒業後、東京で獣医師として働いていた。そこで出会ったのは、犬や猫を家族のように愛する高齢者たちだった。足を痛めて動物病院まで連れていくことができず「家で往診できませんか」と望むおばあさん。がんで余命宣告され、犬を抱きしめ「この子の面倒をみて」と懇願するおじいさん。「犬や猫、人も皆同じ命。できる限り一緒に生涯を過ごせるような医療はできないか」。医師と獣医師、両方に貢献できる存在になる。そう考えて受験し直した。

 間もなく2作目のリリースをひかえる岩嵜さんの元に、新たな朗報が届いた。10月にオランダで開かれる世界最大級のダンスイベントへ、参加依頼が来たのだ。ただその時期、医学生としての実習も多忙を極める。「何とか両立させたい」。スケジュールのやりくりに知恵を絞っている。

 音楽も、健康も、ペットの動物たちも。それらはどれも、人の心を苦悩から解放してくれる。だから岩嵜さんは全力で、全ての道に橋を架ける。

=2018/04/27付 西日本新聞朝刊=

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