主要イチゴは久留米由来!! 続々と新品種を開発 九州沖縄農業研究センター訪問 [福岡県]

イチゴを高設栽培している植物工場。山崎篤さんは「立ったまま作業できるので負担が少ない」と語る
イチゴを高設栽培している植物工場。山崎篤さんは「立ったまま作業できるので負担が少ない」と語る
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粒が大きく形のそろった「恋みのり」。久留米研究拠点で開発された(農研機構九州沖縄農業研究センター提供)
粒が大きく形のそろった「恋みのり」。久留米研究拠点で開発された(農研機構九州沖縄農業研究センター提供)
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人工光で育つリーフレタス
人工光で育つリーフレタス
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 久留米大御井キャンパス(久留米市御井町)の南側に広がる国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)九州沖縄農業研究センター」の久留米研究拠点。イチゴや野菜を栽培する実証施設「植物工場」があり、イチゴの品種改良や栽培技術をはじめ、最先端の研究が進められている。研究拠点を訪ねると、国内で生産される主要なイチゴの品種はいずれも久留米に関わりがあることが分かった。

 久留米研究拠点は1947年、農林省(当時)の園芸試験場九州支場として開設された。敷地は11ヘクタールで、研究職や技術職など36人(4月時点)が働く。

 戦前は旧陸軍の敷地で、軍馬の養成にも利用されていた。敷地の一角には、国威発揚のために神格化された「肉弾三勇士(爆弾三勇士)」の記念碑跡もある。

 まず、久留米研究拠点のトップ、園芸研究領域長の山崎篤さん(56)が施設の概要を説明してくれた。資料で目を引いたのは、久留米研究拠点で開発されたイチゴの新品種の多さ。ここ数年だけで8種。ビタミンCを多く含む「おいCベリー」、種子から育てる「よつぼし」など、それぞれに特徴がある。

 イチ押しは「恋みのり」。粒が大きく収量が多いことに加え、形がそろっていてパック詰めなどの作業を省力化できる。また日持ちが良く、海外輸出にも向いている優れものだ。東南アジアへの輸出拡大に向けて、輸送コストが高い航空便ではなく、専用の容器や包装を使った船便の輸出にも取り組んでいる。

 1990年代、国内生産のイチゴは「女峰」「とよのか」の2品種が主流だったが、2000年ごろから「あまおう」「さがほのか」など、各県の独自ブランドによる「乱戦状態」(山崎さん)になった。ただ、作付面積トップ10(12年)の品種をみると、全て久留米研究拠点で生まれた品種が交配の組み合わせに関わっている。「全てに久留米の血が流れています」と山崎さん。率直に驚いた。

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 次に向かったのは、人工の光でリーフレタスやカイワレ大根を栽培する植物工場だ。遮光カーテンを開けてガラス窓をのぞくと、光を浴びながら、青々と育ったリーフレタスが棚の上に並んでいた。種まきから収穫までわずか30~40日。光や水、空気など野菜にとって理想的な環境を整えることで、一定の品質を安定的に生産できるという。

 すぐ横には、太陽光でイチゴを栽培する植物工場もあり、ここにも最先端の技術が詰まっていた。株の根元に冷温水が流れるチューブを当てる「クラウン温度制御」は、生産性の向上を実現。二酸化炭素の濃度を制御して光合成を促し、栽培用の台を可動式にしてスペースを有効活用することで「10アール10トン」の多収生産が可能になったという。

 イチゴの株が腰の高さにある「高設栽培」も特徴の一つ。地面近くまでかがむ必要がないため、作業の負担軽減につながる。「私が若い頃、イチゴ農家は(腰痛で)ペンギンのように歩いていると言われていて」と山崎さん。農業現場でも徐々に広がっているそうだ。

 人材育成の役割もある。2年間の全寮制で農業高校の卒業生などを受け入れ、野菜栽培に関する実践的な技術や知識を伝える。現在の寮生は8人。卒業生は1600人を超え、九州一円の農業現場やJA、研究機関で活躍しているという。

 久留米研究拠点は、普段は一般市民が立ち入る機会は少ないが、国内のイチゴ生産を語る上で欠かせない場所だった。2年に一度のペースで一般公開も予定されている。

=2018/07/21付 西日本新聞朝刊=

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