暮らし守る防災拠点 国交省九州技術事務所(久留米市)を見学 [福岡県]

危険な場所でも作業できるパワーショベルなどの特殊重機や車両を多数保有する
危険な場所でも作業できるパワーショベルなどの特殊重機や車両を多数保有する
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戦後の復興期に活躍した国産ブルドーザーが展示されている
戦後の復興期に活躍した国産ブルドーザーが展示されている
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モデル橋の上で、ハンマーを使って橋面をたたく見学者
モデル橋の上で、ハンマーを使って橋面をたたく見学者
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九州技術事務所には九州地方整備局が被災した場合に備え、指揮拠点のバックアップ機能もある
九州技術事務所には九州地方整備局が被災した場合に備え、指揮拠点のバックアップ機能もある
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 九州全域の公共インフラ整備や防災分野の技術開発を担う国土交通省九州技術事務所(久留米市高野1丁目)。水害や地震が起きた際は特殊車両と建設重機を繰り出し、人命救助や復旧活動に奮闘する。久留米の地から人々の暮らしを守る現場の取り組みを見学した。 (山口新太郎)

 筑後川沿いにある技術事務所の敷地に置かれた古びたブルドーザー。前身の久留米機械整備事務所時代に活躍した国産機だ。1950年の事務所開所当時、民間企業は資力に乏しく、国が直営で道路や河川を整備した。事務所は重機を多数保有し、戦後復興を支えた。

 現在、事務所が力を入れるのは防災だ。保有する車両約15台は一部を除いて災害復旧向け。そんな話を職員から聞いていると、事務所中庭に並ぶパワーショベルの1台が、無人の状態で動きだした。

 「二次災害の恐れがある場所でも作業できる遠隔操縦ロボットが付いています」と植田定技術副所長が説明する。既存の重機の運転席に取り付け、最大150メートル離れた場所からリモコン操作できるという。91年に起きた長崎県雲仙・普賢岳災害を機に開発が本格化し、熊本地震の土砂崩落現場でも活躍した。

 道路が寸断され、運搬が難しい現場でも、ヘリコプターでつり下げて分解輸送できるパワーショベルも置かれていた。600メートル先を照らす照明車や浸水した道路から水を抜く排水ポンプ車など、災害内容に応じた車両がそろう。

 次いで、83年間使用されたうきは市の旧寿橋の橋桁と橋面を再利用したモデル橋(高さ7・2メートル、幅6・1メートル、長さ9・1メートル)を見た。

 九州には約10万の橋があり、その多くが近い将来、老朽化で補修や架け替えが必要となる。自治体には橋の保守点検ができる技術者は少なく、実習の場として本年度に整備された。

 橋面に上がり、コンクリート製の床をハンマーでたたくと、場所によって微妙に音が違う。「正常な箇所は重い音がするのに対し、老朽化して空洞のある箇所は軽い音がします」と総括技術情報管理官の野尻浩人さん。高所作業車を使って実地に学べるのが特長だ。

 最後に訪れたのは、技術事務所3階にある「九州防災・火山技術センター」。約15台のモニターが置かれ、災害時に福岡市の九州地方整備局や関係機関とテレビ会議できるほか、道路や河川に設置した中継カメラの映像を映し出す。整備局が被災した際にはここが対策本部になるという。

 全国でも珍しい火山対応専門部署でもあり、堤宏徳火山防災減災課長は「九州には17の活火山があり、活動が活発。災害対応のノウハウを蓄積し、全国に伝える役割を担っています」。降灰量調査のやり方を指導したり、土石流発生のメカニズムを調べたりするため全国を飛び回っているという。

 技術事務所は一般の見学者を受け入れている。授業の一環で訪れた福岡大工学部1年の遠山輪さん(19)は「社会インフラに関心があったが、土木や建設技術が防災にも役立っていることをあらためて感じた」と話した。

=2018/08/18付 西日本新聞朝刊=

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