「ちくご大歌舞伎」稽古に熱 久留米で10月公演 住民出演、プロが指導 [福岡県]

早くも本格化した久留米ちくご大歌舞伎の稽古風景。花柳貴答さん(右端)と花柳津祢里さん(左奥)が指導する
早くも本格化した久留米ちくご大歌舞伎の稽古風景。花柳貴答さん(右端)と花柳津祢里さん(左奥)が指導する
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1970年に開かれた第1回公演の様子
1970年に開かれた第1回公演の様子
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身ぶりを交えて稽古を付ける故坂東三津五郎さん(右手前)=2011年9月
身ぶりを交えて稽古を付ける故坂東三津五郎さん(右手前)=2011年9月
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 筑後地区の住民が企画、出演する「久留米ちくご大歌舞伎」(実行委員会など主催、西日本新聞社など後援)の季節が今年もやって来た。10月21日、久留米市六ツ門町の久留米シティプラザで開かれる本番に向け、稽古も熱を帯びている。

 今年で48回を数える大歌舞伎は1970年、久留米市内の官民トップらによる名士劇「久留米市歳末たすけあい 愛の芸能まつり」としてスタートした。73年に「久留米市民芸能祭」、2008年には現在の名称に変わった。回を重ねるにつれて名士劇から脱皮し、住民が幅広く参加する市民歌舞伎として定着した。

 最大の特長は、プロの役者が手取り足取り指導に当たることだ。1979年から2008年まで人間国宝の歌舞伎役者二代目中村又五郎さんが、翌09年からは坂東三津五郎さんが死の前年の14年まで稽古を付けた。

 現在は、又五郎さんとともに久留米通いを続けてきた日本舞踊家の花柳貴答(きとう)さん(67)=東京都=と、同じく日本舞踊家の花柳津祢里(つねさと)さん(63)=久留米市=が演出と演技指導を受け持つ。

 地元名士による歌舞伎公演はかつて各地で盛んだったが、集客難から時代とともに姿を消した。その中にあって「本物の衣装や舞台装置を使うことができ、プロの演技指導も受けられる大歌舞伎は全国的に珍しい」と津祢里さん。「間もなく半世紀。市民主体で続けてきたことに意味があります」と話す。

   *    *

 今年の出演者は4歳~70代の約60人。20日、市内のホテルで初顔合わせがあった。練習は7月末から個別に始まり、全員の配役が決まった盆明けから本格化した。

 演目は、しゃべりの不自由な絵師、浮世又平が起こした奇跡を描く「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)(土佐将監閑居(とさのしょうげんかんきょ)の場)」▽人気演目の見どころをダイジェストで見せる「歌舞伎吹寄(かぶきふきよせ)」▽実際の殺人事件を基にしたサスペンスドラマ「伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)」▽5人の大盗賊が立ち回りを演じる名場面が有名な「白浪五人男(しらなみごにんおとこ)」-の四つ。

 初出演ながら「歌舞伎吹寄」の一場面「源氏物語」で主人公光源氏を務めるドリームスエフエム放送社長の熊手彩人さん(49)は「みんな知っている役。光栄に思う半面、自分で良いのかとの不安もある」と話す。舞台に立つのは中学生以来という。

 休日に3日間かけてせりふを覚え、20日の練習に臨んだ。「独特のせりふ回しがうまくいかず苦労しています。未知の世界に挑戦できるのはとても楽しい」と汗をぬぐった。

 一方、記者(26)も、昨年に次いで2度目の舞台を踏む。慣れない浴衣に身を包み、仕事の合間を縫って練習場に足を運んでいる。今年もらった役は、歌舞伎吹寄のうち「角力場(すもうば)」に登場する仲居役だ。昨年と違ってせりふもある。

 「もし太夫(たゆう)さん」「ちゃっとお休みなさいませいなぁ」。独特の言い回しに舌をかみそうになる。ついせりふに集中しがちだが、演技もしなければ…。悪戦苦闘の日々がしばらく続く。

=2018/08/25付 西日本新聞朝刊=

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