九州最古のヴォーリズ建築 ルーテル久留米教会築100年 戦火免れた歴史を今に [福岡県]

教会堂内部。築100年とは思えないほど保存状態は良い
教会堂内部。築100年とは思えないほど保存状態は良い
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2階席を含め約150人を収容できる。2階席は現在改修中
2階席を含め約150人を収容できる。2階席は現在改修中
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赤れんが造りの外観が目を引く久留米教会堂
赤れんが造りの外観が目を引く久留米教会堂
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らせん状に作られた階段。靴の収納スペースもある
らせん状に作られた階段。靴の収納スペースもある
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教会堂完成を伝えるプレート。「大正七年十一月九日」の日付が刻まれている
教会堂完成を伝えるプレート。「大正七年十一月九日」の日付が刻まれている
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 久留米市中心部のビル街の一角に、赤れんが造りの歴史的建築物がある。今年で築100年を迎える日本福音ルーテル久留米教会(同市日吉町)だ。設計を手掛けたのは、明治から昭和にかけて活躍した米国出身の建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880~1964)。九州に残るヴォーリズ建築で最古というその教会堂を市文化財保護課の神保公久さん(46)とともに訪ね、機能美にあふれた魅力に迫った。

 ヴォーリズは、米国中西部のカンザス州に生まれ、1905年に滋賀県の商業高校の英語教師として来日した。建築に造詣が深く、08年には京都で建築設計監督事務所(後のヴォーリズ建築事務所)を開設。83歳で生涯を閉じるまで滋賀県近江八幡市にとどまり、国内各地で教会や学校、百貨店、住宅などの建築に関わった。

 九州では、西南学院大博物館(福岡市)、活水女子大本館(長崎市)、日本福音ルーテル小城教会(佐賀県小城市)などがゆかりの建物として知られる。建築にとどまらず、メンタームで知られる製薬会社「近江兄弟社」の創業者の一人でもある。

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 久留米教会に着くと、宮川幸祐牧師(38)が出迎えてくれた。教会は1901年の創立で、教会堂が建てられたのは18年11月。元は武家屋敷を改装して礼拝に用いていたが、信徒の増加に伴い本格的な礼拝堂を求める声が高まった。

 宮川牧師によると、当時の久留米教会にはデンマーク系の米国人宣教師が代々派遣されていたため、米国に留学中の信徒が同国内のデンマーク系の教会を巡り、建設資金を募ったという。

 教会堂は100年前の建物とは思えないほど保存状態が良く、外観や室内装飾の美しさに魅せられた。

 「細かな補修はしていますが、雰囲気は創建当時のままです」と宮川牧師。木製のいすや扉、柱が歴史を感じさせる。ヴォーリズ建築のファンが見学に訪れることもあるという。

 神保さんは「歴史の重厚感が伝わってくる。久留米の誇りとしてずっと保存しないといけない」と語り、吹き抜けの天井を見上げた。

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 1世紀に及ぶ歴史の中で、戦火もくぐり抜けた。市中心部が甚大な被害を受けた久留米空襲(1945年8月11日)の際は傍らまで火の手が迫ったが、信徒の学生たちが必死に消火に当たり延焼を防いだエピソードが伝わる。空襲による焼失を免れた市内の旭屋デパート(後の井筒屋)や金文堂ビルは既に取り壊されており、教会堂は久留米の近代史を語る「生き証人」ともいえる存在だ。

 市内が震度5強の揺れに見舞われた2016年の熊本地震でも、大きな被害はなかった。

 宮川牧師によると、教会は築100年を記念して9月24日にバイオリンコンサート、10月にヴォーリズ建築に関する講演会、11月には記念礼拝を計画し、記念誌も作る。宮川牧師は「単に100年たっているだけでなく、毎週の礼拝が守られてきたことが素晴らしい。建物を維持しながら、ここで行われてきた活動を未来に伝えていきたい」と語った。

=2018/09/08付 西日本新聞朝刊=

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