【動物を幸せに~大牟田動物園の挑戦】(4) ハズバンダリートレーニング(上) キリン採血 成功までに [福岡県]

柵にくくりつけられた木の葉を食べるプリン(右)。左は仲良しのリン
柵にくくりつけられた木の葉を食べるプリン(右)。左は仲良しのリン
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採血のために首に注射針を刺されたプリン
採血のために首に注射針を刺されたプリン
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 大牟田市動物園のキリンのプリン(雌、4歳)は週1回、採血を受ける。園内で動物が幸せに長く暮らすには、病気の早期発見など健康管理が欠かせない。性成熟期のプリンが、リン(雄、13歳)との間に妊娠していないかどうかも定期的に確認できる。

 10月中旬の夕刻、展示場で客が見守る中で採血が始まった。キリン班の飼育員河野成史さん(26)が柵の外から、手のひらに十数個の小さなペレット(餌)を載せて差し出すと、プリンは首を下げ、長い舌を伸ばして食べ始めた。首を動かさない間、獣医師の川瀬啓祐さん(29)が、頭の下20センチほどの首に注射針を刺した。その瞬間もプリンはもぐもぐと食べ続けた。終了までわずか数十秒だ。

 嫌がるそぶりを見せないプリンだが、針を刺されて痛みを感じるのは人も動物も同じ。定期的に採血できるようになるには、相当な訓練が必要となる。

 採血や体重測定、病気の治療といった健康管理を、動物にとっても飼育員にとっても安全、確実に行えるように、動物の協力の下で体勢を覚えてもらう訓練を「ハズバンダリートレーニング」(受診動作訓練)と呼ぶ。近年は国内の多くの動物園が取り入れているが、猛獣を含めて園全体で積極的に導入する大牟田市動物園は全国でも珍しい。各地の飼育員が視察に訪れるほど高評価を受けている。

 「飼育員に協力的な行動をすれば良いことがある」ことを動物に何度も繰り返して学習させるのが訓練の基本となる。「良いこと」をすれば、飼育員が合図(笛を吹く)をして餌を与え、覚えさせていく。「動物ショー」の訓練と似ていても目的は全く異なり、動物への強制になっても負担になってもいけない。

 実際の訓練では小さな目標を設定し、段階的に一つ一つクリアしていき、最終目標の達成を目指す。「いつまでに達成」という期限設定はない。

 プリンの採血訓練は、河野さんの存在に慣れさせるところから始まった。

 まずは好物の葉っぱがたくさん付いた木の枝を見せて気を引き、近寄って食べさせる。その後、少しずつ枝を短くして距離を詰め、「河野さんと接しても安全」と認識させていく。

 「人間の子どもが知らないおじさんからお菓子をもらうのを、最初はためらうのと同じ」。河野さんは慌てず、じっくりとプリンと向き合っていった。

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 大牟田市動物園(同市昭和町)が全国の注目を集めている。「動物福祉を伝える動物園」として高い評価を受け、入場者数増にもつなげている。飼育動物の「幸せ」のために、公設民営の小さな動物園が始めている取り組みを紹介する。

=2018/11/14付 西日本新聞朝刊=

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