【動物を幸せに~大牟田動物園の挑戦】(1) 「福祉を伝える」 出勤はモルモット任せ [福岡県]

モルモットと触れ合う子どもたち。箱の中が隠れ場になっている
モルモットと触れ合う子どもたち。箱の中が隠れ場になっている
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入り口に設置されている手書きの看板。「ぞうはいません」
入り口に設置されている手書きの看板。「ぞうはいません」
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 「ぞうはいません」。入り口の手書きの看板が、大牟田市動物園のコンセプトを象徴している。

 4日の日曜日。小高い森に囲まれた動物園には家族連れやカップルが次々に来場した。車は駐車場に入りきれず、係員が隣接する旧中学校敷地に誘導。動物園で人気のゾウがいなくても、市内で最も多くの来場者を誇る観光施設だ。

 2013年に雌の「はなこ」が死んで以降、飼わないと選択したのは、本来ゾウは群れで生活する動物で、複数頭を飼える敷地がないのが大きな理由だ。「身の丈に合った活動」を掲げる椎原(しいはら)春一園長(59)が13年前に着任した当時、約80種500頭の動物がいたが、現在は約50種250頭と半減した。その分、1頭当たりの面積は広がり、飼育員の対応時間も増えた。

 そこに椎原園長の狙いがある。珍しい動物やお金を掛けたイベントだけで集客するのではなく、動物に配慮した飼育を行い、その解説をする飼育員もまるごと展示して「動物福祉を伝える動物園」として集客につなげていく‐。

 動物福祉実践の分かりやすい例が、子どもに大人気のモルモットと、来場者の触れ合いイベントだ。

 「頭だけをなでてください」。4日、飼育員の古賀秋穂さん(21)の呼び掛けで、多くの子どもたちが触れ合いスペースの中に入り、モルモットを間近で見たり、毛をなでたりして喜んだ。他の動物園でも見られる光景だが、大牟田ではモルモットに負担を掛けない工夫が徹底されている。

 まず、モルモットがイベントに参加するかどうか、彼らの「意思」に任されている。時間になると、モルモット舎と触れ合いスペースの間に3メートルほどの橋が架けられる。そこを渡り「出勤」するかどうかは自由。実際に毎回、約半数の30頭ほどしか橋を渡らない。

 触れ合いスペースには、モルモットがいつでも中に隠れられるように中央部に穴を開けた箱もある。モルモットは人が触るのを「いいよ」と思っているかもしれないし、「今は嫌」かもしれない。嫌ならば箱の中に逃げられる。逃げられる環境があれば、ストレスの原因にもならない。

 「かわいい」「かわいそう」といった人の感情に基づいて命を重視する「動物愛護」ではない。「動物の立場で考え、生活の質を高める『動物福祉』を追求したい」。椎原園長の考えは園全体に行き渡っている。

   ◇     ◇

 大牟田市動物園(同市昭和町)が全国の注目を集めている。「動物福祉を伝える動物園」として高い評価を受け、入場者数増にもつなげている。飼育動物の「幸せ」のために、公設民営の小さな動物園が始めている取り組みを紹介する。

=2018/11/10付 西日本新聞朝刊=

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