アラビア語劇で国際理解育む 久留米大付設高演劇部、全国大会へ 中東への偏見拭い去る [福岡県]

九州高校演劇研究大会で演じる久留米大付設高演劇部(久留米大付設高提供)
九州高校演劇研究大会で演じる久留米大付設高演劇部(久留米大付設高提供)
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全国大会に向け、放課後に稽古に励む演劇部員
全国大会に向け、放課後に稽古に励む演劇部員
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エジプトの家庭料理を楽しむシリーンさん(左から2人目)と部員
エジプトの家庭料理を楽しむシリーンさん(左から2人目)と部員
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 久留米大付設高演劇部がアラビア語と英語を交えた創作劇に励み、昨年12月、筑後市であった第60回九州高校演劇研究大会(九州高校演劇協議会など主催)で入賞。3月に愛知県で開かれる全国大会に出場する。全国高校演劇協議会事務局によると、アラビア語を使った演目は初めてという。なぜアラビア語なのか、どんな劇なのか-。久留米市野中町の同高を訪ねた。

 「言葉が違っても、生まれ育った場所が違っても、でも同じじゃん。同じ高校生じゃん」

 19日午後5時。校内の一室で、ジャージー姿の演劇部員たち12人が稽古に励んでいた。演じるのは、アラビア語を取り入れた創作劇「砂漠ガール」。ヨルダン人留学生ライラと、ホームステイ先の高校2年ひかるが主人公。言葉が通じないストレスからライラと打ち解けられないひかるが言葉の壁を乗り越え、ライラと友情を築く一夏の物語だ。

 劇では、ライラが日本語を、周りの日本人がアラビア語を話す。言葉が入れ替わることでライラが感じる孤独や不安、知らない言葉に囲まれる感覚を観客に知ってもらう狙いがある。字幕もない。脚本演出を手掛けた顧問の岡崎賢一郎教諭(45)は「アラビア語は英語や中国語に比べて全く分からない人が多い。表情やしぐさで『何となく分かるかも』という感覚を演出したかった」と話す。

 アラビア語を取り入れた理由について「中東には『自爆テロ』『紛争』といった負のイメージがある。そうした偏見を拭い去りたかった。生徒たちも演劇を通して『同じ人間なんだ』と感じてくれるのではないか」。夏休みを利用してヨルダンを訪れ、現地の状況を目にして脚本執筆に生かした。

 九州大会では、審査員から「発想が斬新」「言葉が分からなくても感動した」と高く評価され、上位2番目となる優秀賞1席に入り、全国大会出場を決めた。

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 昨年7月、岡崎教諭からアラビア語劇の提案を受けた2年で部長の下野舞花(まいか)さん(17)は「驚きました。アラビア語も中東の国もよく知らないので不安もありました」と振り返る。

 しかし、久留米大比較文化研究所で比較児童文学を学ぶエジプト出身のシリーン・エルモータセムさん(40)に発音指導を頼み、放課後の練習に加わってもらったことで部員たちの不安は解消された。シリーンさんの発音をスマートフォンに録音して家で繰り返し聴いたり、発音をカタカナでノートに書き写したりして台本を頭にたたき込んだ。

 シリーンさんは「アラビア語は世界でも難しい言語で、日本語にない発音も多い。にもかかわらず生徒たちはすぐに覚え、生き生きと演じる姿に驚きました」と笑顔を見せる。

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 1月中旬。久留米大付設高の多目的教室で、シリーンさんを交えた九州大会の打ち上げがあった。シリーンさんは自国の家庭料理「コシャリ」を自作し、振る舞った。部員たちは初めての料理に「これはどうやって食べるの」「辛くない」と興味津々。

 「ラジーズ(おいしい)!」。一口食べた部員がアラビア語で声を上げると、教室は笑いに包まれた。

 岡崎教諭は「最高の国際交流ですよね。生徒も偏見にとらわれず、他国や異文化を知る大切さを実感したと思う」。ライラを演じた下野さんは「最初は中東に対して良いイメージはなかったけど、シリーンさんと出会い、アラビア語を使うのが楽しくなった。テレビで中東のニュースがあると気になるし、行ってみたいと思うようになりました」と語った。

 その姿は、ライラと心を通わすひかるの姿と重なる。「言葉は分からなくても分かり合えるということを観客に伝えられれば」と下野さん。そうした思いを胸に、部員たちは全国大会へ臨む。

=2019/02/23付 西日本新聞朝刊=

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