先生は教育長、生徒は大人たち 異色の「国語の授業」好評 大刀洗町の生涯学習講座 [福岡県]

和やかな雰囲気で進む倉鍵君明教育長の「国語の授業」
和やかな雰囲気で進む倉鍵君明教育長の「国語の授業」
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 大刀洗町の生涯学習講座で、異色の「国語の授業」が開かれている。講師は倉鍵君明教育長(69)。教育長が自ら教壇に立ち、学校を卒業して久しい大人たちが「生徒」となって、学びの時間を過ごしている。

 「今日はあまり脱線せず、『大垣』まで行きつかないといけませんね」。1月末に開かれた第4回は、松尾芭蕉の「奥の細道」を全て読み通す講座の最終回。約30人が受講し、「象潟(きさがた)」から「大垣」までの終盤12章、旅の地をたどった。

 倉鍵教育長の授業は現代語訳にとどまらない。芭蕉の文章には先人の古典文学や中国の故事などが織り込まれており、それらも念頭に解説が進む。例えば「象潟」。芭蕉は目前の光景に、〈象潟や雨に西施(せいし)がねぶの花〉と句を詠む。倉鍵教育長は「象潟の海辺に合歓(ねむ)の花が雨にしおたれているさまは、伝承にある中国の美女、西施がしっとりうつむいているさまを想像させる」と読み解いた上で「西施は沈魚(ちんぎょ)美人とも言われる。あまりの美しさに、(目にした)魚がぶくぶくと沈むほどだった」と語って受講生たちの笑いを誘った。

 明善高や朝倉高、香椎高などで教諭、久留米高、朝倉高、春日高で校長を務め、2009年から教育長を務めている。講座は12年、単発で開いたところ好評に。以来「国語の授業」として論語、方丈記、枕草子などを読んできた。受講生の主婦(65)は「学生時代と違い、人生の機微を受け止められるようになった気がする。授業は分かりやすくておちゃめ」とほほ笑む。

 全4回延べ6時間にわたった授業では、準備に倍以上の時間をかけたという。「昔の人の言葉が一瞬のうちに固定して、今の私たちに伝えられる。それが言葉の力」と文学の魅力を語る倉鍵教育長。新年度の題材は、これからじっくり検討するという。

=2019/03/01付 西日本新聞朝刊=

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