大牟田市「誤算」どこに? 市庁舎整備予算案削除へ 市民論議促す工夫なく [福岡県]

国登録有形文化財の大牟田市庁舎本館
国登録有形文化財の大牟田市庁舎本館
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 大牟田市庁舎整備で本館解体を盛り込んだ基本方針を巡り、基本構想策定費1600万円を削除する修正案は22日の市議会本会議で可決される見通しだ。中尾昌弘市長は「基本方針は一定の理解が得られている」として現時点で見直しには否定的だが、事業規模数十億円の重要案件で議会の理解が得られない事態は、市にとって大きな痛手。市の「誤算」はどこにあったのか-。

 昨年6、7月に市民アンケートを実施し、有識者も交えた検討委員会の結論も踏まえて基本方針を決めた。手続きに問題はない-市はこの論理で押し通そうとした。

 ところが本館解体の方針を初めて公表した今年2月初旬以降、市民説明会で「取り壊すと初めて聞いた」と反発の声が相次いだ。

 2千人が対象の市民アンケート(回収率51・6%)では「建て替えてもよい」が57・5%と過半数を占めたものの、「改修して維持したい」も35・1%と3分の1を超えた。本館解体について市民の理解を得るのは容易でないことは予想できたにもかかわらず、市が基本方針公表までの間に市民の議論を丁寧に進める工夫はなかった。解体は庁舎に文化的な価値を抱く市民にとって唐突に映った。

 議会では「新庁舎は建てても、本館はまちづくりに生かしたいとの声をくみ取れていないのでは」といったアンケートそのものを疑問視する意見も出た。

 さらに検討委委員長を務めた大学教授が2月末、「庁舎以外の活用も含めれば、保存派が委員の多数だった」と市に抗議する異例の事態に。市は「個人的意見」「見解の相違」と突っぱねたが、市民や議会に「市役所内部の論理で強引に進めている」との印象を与えてしまった。

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 市は、新庁舎建設に関して国の有利な財政措置に間に合わせるため、3月中に議会の理解を得たい考えだった。このため解体反対派が質疑を通してボルテージを上げても「事業費の将来負担も踏まえれば、基本方針が最善」として歩み寄る姿勢を見せなかった。議論が平行線をたどる中で、中尾市長の「最終的には議会の判断」との言葉には、これまで市長を支えてきた会派の議員からも不満が漏れた。

 「正論だが、市長自身の責任もあるはず。議論できる時間が1カ月余りしかなく、議会にだけ責任を押し付ける言い方に違和感がある」。賛成派も抱える全4会派が13日、修正案提出で一致したのにはこうした背景があった。

 ただ22日の修正案可決は、本館の保存か解体かの議論の収束には直結しない。それでも、この間に庁舎整備に市民の関心が高まったのは間違いなく、禍根を残さない解決の道を探る好機が訪れたともいえる。

=2019/03/21付 西日本新聞朝刊=

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