「筑豊文庫の食卓」再現 記録作家の故上野英信さん、鞍手町で開設 来客もてなした料理 [福岡県]

「筑豊文庫」のおしながき
「筑豊文庫」のおしながき
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再現された「筑豊文庫の食卓」の品々
再現された「筑豊文庫の食卓」の品々
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にぎやかに再現された「筑豊文庫の食卓」を楽しむ上野朱さん(右端)ら
にぎやかに再現された「筑豊文庫の食卓」を楽しむ上野朱さん(右端)ら
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 記録作家の故上野英信さん(1923-87)が、鞍手町の炭鉱長屋を改築して開いた住居兼活動拠点「筑豊文庫」で訪れる人をもてなした食卓の品々が再現された。長男で古書店主の朱(あかし)さん(61)=宗像市赤間=の記憶を基に直方市食生活改善推進会がつくり、市内のイベントで市民らが味わった。企画した直方歳時館(同市新町)は再現第2弾も検討する。

 「筑豊文庫」は64年に英信さんが鞍手町に移り住んで開いた。炭鉱で働いた経験を持ち、エネルギーの転換によって消えゆく炭鉱や労働者の姿を記録する作家の元に全国からジャーナリストや写真家、画家、学生らが集い、好きな酒を交えて妻晴子さんの手料理でもてなしたという。

 その食卓の風景を5日に始まった「食を楽しむイベント」で再現。「大きな皿にどーんと料理をのせて自由に食べてもらった」との朱さんの記憶に沿って「おしながき」とともに、皿に盛ったがめ煮や英信さんの好物という「鶏もも肉の煮込みから揚げ」などがテーブルに。事前の募集に応募した市民を含め約30人が箸をのばした。

 朱さんと親交のある北九州市出身の画家牧野伊三夫さん(54)は「ここにあるのは毎日食べたい家庭のごはん。みんなとわいわいやりたくなる」。筑豊の炭鉱の歴史を人々に聞き取って研究している東大大学院生の川松あかりさん(28)は「彩り豊かでも飾り立てた特別なおもてなしではない。当時がしのばれる」と文庫の食卓に思いをはせた。

 併せて開かれたトークイベントで、朱さんは「英信は大変な食いしん坊。母を手伝い、私は台所で育った」「まるで旅館のように多くの人が集まり、楽しい食卓だった」「山菜や野菜、魚など近所の人々が食材を持ち寄り、支えていただいた」などと思い出を披露。牧野さんや川松さんらと食卓を囲み、「とても懐かしい」と感慨深げだった。

 今回の品々を松花堂弁当で楽しめる千円の「筑豊文庫の食卓おしながきランチ」が14日に提供されるが、限定30食の予約は既に満杯に。直方歳時館は「春にはワラビやツクシと、季節ごとの彩りが食卓にはあったと聞く。市民の皆さんに食べていただく機会をまた検討したい」としている。

=2018/10/10付 西日本新聞朝刊=

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