共同住宅消え、低額宿泊所が受け皿に 生活困窮者の住まい 中村荘火災から1年 [福岡県]

生活困窮者の受け皿になっている無料・低額宿泊所「キートス幸神」
生活困窮者の受け皿になっている無料・低額宿泊所「キートス幸神」
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 6人が死亡した北九州市小倉北区の木造アパート「中村荘」の火災から7日で1年を迎えた。北九州市によると、火災後、中村荘のように日払い家賃で生活困窮者を受け入れていた共同住宅は市内から姿を消した。代わって困窮者の受け皿となっているのが、住居と食事を安く提供する民間の「無料・低額宿泊所」だ。昨年9月に開所した八幡西区の宿泊所「キートス幸神(さいのかみ)」を訪ねると、自立までの「一時的な住まい」として機能する一方で、行き場が限られた人たちの「定住の場」となりつつある実態も見えた。

自立までの「一時的な住まい」

 「派遣切りで会社の寮を1週間以内に出ないといけない。住むところがない」。今年1月、キートスに男性から突然の相談があった。男性は1週間後に入居。半月ほどで新たな職を見つけ、宿泊所を後にした。

 キートスは行橋市を拠点にグループホームなどを運営する社会福祉法人「共生の里」が運営する。1年ほど前、「生活困窮者の住宅確保や就労支援が必要」と構想が持ち上がった。内部では「負担が大きい」との声もあったが、中村荘の火災も開設を後押しした。

 目的は、住居のない生活困窮者が生活を立て直すまでの間の住まいを提供すること。生活保護を受給するにしても、決定まで最長1カ月かかるためだ。利用料は家賃、自立を手伝う就労支援費、1日3食の食費などを合わせ月額7万円ほどに抑えている。利用期間は原則最長1年間。更新による延長や日割りもできる。

就労・独居難しく「定住化」も

 施設は現在、20~70代の幅広い生活困窮者の男女が入る。部屋は23室。今月1日に8室増やしたばかりだが、「すぐいっぱいになると思います」と前原善泰施設長(36)は話す。3人が入居待ちで、1日まで待つ余裕がなかった5人は断らざるを得なかったという。

 キートスは、部屋に余裕がない理由の一つに、早期に退去する人が少ないことを挙げる。現在の入所者のうち就労しているのは3人だけ。軽度の知的障害者や保証人がいない元路上生活者、介護度が低く施設に入れない高齢者…。さまざまな事情を抱え、行き場が限られた人が集まる。共生の里の宮本政幸理事長(67)は「入所者に自立を促し、新たな人を受け入れていきたいが、就労や独居が難しい人が多く、現実的には難しい」と打ち明ける。

 財政的にも楽ではないという。キートスは系列のグループホームと一体運営することで、経費を節減している。「宿泊所は敷金も取れないなど制限がある。人件費の助成があれば楽になるのだが…」。宮本理事長は、困窮者の受け皿となる施設に対する公的支援拡充の必要性を訴える。

【ワードBOX】中村荘火災

 昨年5月7日深夜に出火、木造2階建てアパート(延べ約280平方メートル)を全焼した。日雇い労働者や生活保護受給者ら16人の住人のうち6人が死亡。火や煙の回りが早い「中廊下式」の構造だったことが被害拡大を招いた一因とされる。県警は失火と放火の両面から調べているが、焼損が激しく原因の特定は難航している。

=2018/05/08付 西日本新聞朝刊=

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