実施求める議会“無視” 吉富漁港の航路しゅんせつ 町長「漁協体質変わらず見送り」 [福岡県]

大分県中津市側では航路のしゅんせつが進む=22日午後2時すぎ
大分県中津市側では航路のしゅんせつが進む=22日午後2時すぎ
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吉富漁港の航路しゅんせつを求める声が相次いだ8日の行政懇談会。右から2人目は今冨寿一郎町長
吉富漁港の航路しゅんせつを求める声が相次いだ8日の行政懇談会。右から2人目は今冨寿一郎町長
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 昨年7月の九州豪雨の災害復旧として町政の課題に挙がりながら、吉富町の吉富漁港の航路に堆積した土砂などのしゅんせつを、町が1年近くも実施しない状態が続いている。吉富漁協の前組合長の言動を問題視する今冨寿一郎町長は、町議会6月定例会で漁協役員の暴力的発言が新たにあったとして、当面予算計上しない方針を示した。早急なしゅんせつ実施を求める町議会や漁業者。その訴えに耳を傾ける構えを見せない町長。事態打開のめどは立っていない。

 ◆「大げさな批判だ」

 「漁協役員からまた暴力的発言があった」。今冨町長は19日の町議会で明らかにした。漁業者が多い地区の行政懇談会で、町職員が港の管理を説明した際、漁協役員が「うち殺すぞ」と発言したという。

 記者はこの説明会を取材しており、漁協役員から数メートル離れた場所にいた。自分のICレコーダーで確認してみたが、声は聞き取れなかった。会場にいた地元区長も聞こえなかったという。そこで漁協役員のそばに置かれていた別のレコーダーの録音を聞かせてもらうと、「うち殺す」とつぶやく声があった。

 発言を調査した山本定生町議(無所属)は「発言は適切ではないが、下を向いての独り言。役員が面と向かって言ったものではない」と語り、町長の説明については「大げさな批判だ」と指摘した。

 ◆再発防止策を提出

 町がしゅんせつを見送った発端は、漁協の前組合長が昨年7月、しゅんせつを要望した際の暴力的言動。今冨町長は法律や条例などに基づかず、漁協を「暴力的組織」と認定。漁協の体質改善などを求めている。

 漁協は11月の役員会で前組合長が辞任し、現在の山本宗一氏が後任に就いた。陳情書を何度も町に出し、再発防止策も提出した。漁協は今月16日、総会と役員会で山本組合長の再任を決めた。「総会で役員を決める必要がある」などと主張する町長の意向に沿ったかたちだ。それでも、しゅんせつのめどは立たない。

 町内の60代男性は「たとえ漁協の体質に問題があったとしても、町は1年もしゅんせつを見送り続けた。もう、漁協への『制裁』はやめるべきだ」と訴える。

 ◆「リンクは間違い」

 吉富漁港から山国川を挟んだ場所にある大分県中津市の小祝漁港の航路では、しゅんせつ船による作業が続いている。一方、吉富漁港の航路は土砂が堆積したままで、満潮時を中心に船の出入りをするしかない。

 この現状に、岸本加代子町議(共産)をはじめ、党派を問わず多くの議員は「災害復旧事業と、漁協の体質改善をリンクさせることは間違いだ」と強調。航路復旧を早急に行い、漁協側に問題があれば、しゅんせつとは切り離し、話し合いを重ねることを求める。

 若山征洋議長は「当初予算案の2度の否決や専決処分した予算の不承認、補正予算案の否決に込められた議会の思いと重みを踏まえ、町長は考えを改めるべきだ」と語った。

=2018/06/25付 西日本新聞朝刊=

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