【街 みらい】インフラ老朽化 水の街、水道管更新に悩む 岡垣町 財政難で交換追い付かず [福岡県]

注意深く水道管を敷設する作業員たち
注意深く水道管を敷設する作業員たち
写真を見る

 「水のおいしい街」として知られ、豊かな地下水で上水道の大半をまかなう岡垣町の水道事業が苦境に立たされている。北九州市のベッドタウンとして宅地開発を進めた時期に整備した水道管が一斉に更新時期を迎えており、財政難から水道管の交換が追い付かないためだ。このままでは老朽化した管の破裂による漏水事故が起こる可能性も否定できず、町は学識者らによる会議を設置し、水道料金の値上げなどを話し合う考えだ。

■2割が耐用年数超え

 宅地が広がる岡垣町中央部の旭台地区。9月下旬、男性作業員が長さ5メートルの真新しい水道管を約1・5メートル地下に設置し、手際よく隣の水道管と接続していた。町上下水道課職員は「管更新は約40年前の造成後初めて」と話す。

 北九州市の衛星都市として開発が進んだ60~70年代、町は2度の水道管の大規模拡張を実施。水道管網の総延長は現在、約235キロになる。

 町によると、水道管の耐用年数は40年で、2016年度で耐用年数を超えているのは水道管全体の21・67%に上る。同じ給水人口規模の水道事業体の全国平均より約10ポイント高いという。

 一方、水道管の更新は1年間で1%前後に過ぎない。町は劣化の激しい部分から更新を進めるが、「毎年耐用年数を迎えた管の半分も取り換えられていない」(町上下水道課)のが現状だ。

 更新が進まない原因は、原則使用料金でまかなう水道事業会計の悪化が大きい。町によると、料金収入は節水機器の普及などにより減り続け、17年度は約4億2千万円と、08年度より約2千万円減少した。町の推計では、40年には町の人口は現在の約8割の約2万6千人にまで減るため、料金収入のさらなる減少は必至だ。

 町は近年、予算の不足分を水道事業会計で積み立てた預金の取り崩しで穴埋めしている。結果、17年度の預金残高は、この12年で3分の2の約4億7千万円にまで減っている。

 一方、現在のペースで水道管を更新しても、町の試算では今後20年間で約60億円が必要で、打開の見通しは全く立っていない。

■地下水の給水断念?

 岡垣町は9月、水道事業会計の財政破綻を回避し、安定的な給水を維持するため、町長の諮問機関「上下水道事業審議会」を設置。学識経験者らを選んで本年度内に初会合を開き、来年度に答申を求める考えだ。

 審議会は水道料金の見直しのほか、複数の自治体で水道事業を行う広域化も議論する見込みだ。

 同町周辺では、北九州市から水を購入していた芦屋、水巻両町が12年までに同市と水道事業を統合。一般家庭の1カ月の利用目安となる20立方メートルで約3500~約3800円だった使用料金を、統合後に約2100円にまで抑えている。

 岡垣町の現在の利用料金は、20立方メートルで2880円。安価な地下水源を持っていることに加え、「おいしい水の街」のブランドを維持するため、性急な広域化はないとみられるが、仮に周辺自治体と水道事業を統合すれば、地下水での給水を断念する可能性もある。

 町幹部は「自慢の地下水で給水を続けたいが、水道を維持するため、あらゆる可能性を考える必要がある」と苦しい胸中を明かす。

 東洋大の石井晴夫教授(公益企業論)は「小規模自治体の水道経営は苦しい時代。料金値上げで自前の給水を維持するのか、広域化してスケールメリットを生かすのか、最終的には住民が判断するしかない」と指摘した。

【ワードBOX】岡垣町の水

 岡垣町の水道の85%は、地下水が水源。南・西部の山地に降った雨が地下水となっている。町は2016年度、九州大などと共同で水質を調査し、やや硬質でミネラルが多く溶け込んでいる「おいしい水」との結果を公表。町特産の芋焼酎「岡垣」の仕込みにも用いられている。残り15%は北九州市から購入している。

=2018/10/14付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]