「泊まれる本屋」天神で体験 「異空間」寝るまで読書 [福岡県]

本棚に埋め込まれたようなベッドに横になり、本を読む記者
本棚に埋め込まれたようなベッドに横になり、本を読む記者
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店内にある雑誌を敷き詰めた壁と、支配人の月成若葉さん
店内にある雑誌を敷き詰めた壁と、支配人の月成若葉さん
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 「泊まれる本屋」なるものが4月末、福岡市にオープンした。本を読みながら、いつの間にか寝てしまう瞬間の「至福体験」を売りにしている。こたつに潜ったり、カーペットの上で横になったりし、本を読むと眠気に襲われ、家族に起こされる私にとっては最適な空間ではないか。開業前日にあった報道陣向けの内覧会で、お泊まりしてみた。

 店の名は「BOOK AND BED TOKYO(ブック アンド ベッド トウキョウ)福岡店」。福岡市・天神の福岡パルコ新館6階にある。

 入り口は薄暗く、「大人の隠れ家」を思わせる。予約名を告げて早速入店。店内も暗めで暖色系の明かりが所々にある。本棚は足元から天井にまである。

 「コンセプトが分からないように選書してもらったんです」。全国で3店舗を展開する「ブック アンド ベッド トウキョウ」のディレクター力丸聡さん(35)はそう語る。

 選書は、福岡市の書店「ブックスキューブリック」に依頼。約1700冊の蔵書があり、7割が日本語で残りは外国語。小説、雑誌、漫画など1980年代以降の出版物で占められ、今後は客層を見ながら増やしていくという。

 先行して開業した他店では意外にも、普段本を読まない人の来店が多く、「感覚的に取って読みたくなる本を置きました」と力丸さん。「世界のトイレ」「おじさん図鑑」などのタイトルが目を引く。

 さあ、この中から何を読もう。これから眠くなるまで、何者にも邪魔されずに本をむさぼるのだ-。

     ZZz…

 そう思っていると、支配人の月成若葉さん(30)が話し掛けてきた。少々面食らったが、せっかくなので雑談に応じ、月成さんお薦めの本を聞いてみた。

 選んだのは、自宅でお店を開くための指南本と、福岡のうどんを紹介した本。いずれも、福岡市内の店などが取り上げられ、地元をアピールしてくる。

 「京都店に勤めていましたが、お薦めの店をよく聞かれるんですよ」。私は福岡市民だが、遠くからの宿泊客には、観光情報を提供する意義があったのだ。

 店内には本棚沿いの通路に腰掛けることができ、オープンスペースになっている。ほかの客の話し声も聞こえるし、音楽も流れる。「友人同士でお泊まり会をする人もいるし、スタッフは話し掛けるようにしているんですよ」と月成さん。

 そこでピンと来た。本を読むのはもちろん、語り明かすこともできるのだ。飲食物の持ち込みもできるし、ビールやナッツの販売もある。開店から1カ月近くになる福岡店も20~30代女性の利用が多く、「スタッフとのコミュニケーションが楽しい」「異空間に来たみたい」との声が届いている。写真共有アプリ「インスタグラム」への店の投稿に興味をそそられ、来店した人もいるという。

     ZZz…

 さて、共用のシャワーを浴び、読みたい本を吟味し、本棚の中に埋め込まれたようなベッドに潜り込む。活字だとあっという間に寝てしまいそうなので、「寄生獣」という漫画にした。

 箱形の個室になったベッド内には、ランプのような明かりが一つ。店舗は旅館業法に基づく簡易宿泊施設でスプリンクラーもある。

 横になって読み始めた。あと1冊、もう1冊…。結局、全巻読破してしまった。時計はもう午前2時過ぎ。「やってしまった」という思いと、満足感が交錯したまま眠った。

 午前8時半ごろ。力丸さんが「朝の演出」で窓を開け始めた。まぶしい。日光に照らされ、昨夜は気にもしなかった本のタイトルが目に飛び込んでくる。読めばよかったと思っていると、「ここで本は売ってませんが、帰り際にネット注文する人はよくいます」。したり顔の力丸さんがいた。

       ◇

 1泊4800円(税抜き)から。1泊6800円(同)の部屋は2人利用も可能。日中も1時間500円(同)などで滞在できる。福岡店=info-fukuoka@bookandbedtokyo.com

=2017/05/17付 西日本新聞朝刊=

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