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武装障害走 息づく伝統 久留米市の陸自幹部候補生学校 小銃背負い障壁越え、ほふく前進、実弾射撃… [福岡県]

空中のロープを進む「ロープ渡り」
空中のロープを進む「ロープ渡り」
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鉄条網の下をほふく前進する幹部候補生たち
鉄条網の下をほふく前進する幹部候補生たち
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スタート直後にある高さ1・8メートルの「囲壁」。女性には踏み台が用意される
スタート直後にある高さ1・8メートルの「囲壁」。女性には踏み台が用意される
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沿道では教官やOB、家族が声援を送っていた
沿道では教官やOB、家族が声援を送っていた
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 久留米市中心部から車で約20分。高良山の山麓に、将来の陸上自衛隊のリーダーを養成する全国唯一の教育機関「陸上自衛隊幹部候補生学校」がある。卒業までの約10カ月間、高低差156メートルの「高良山登山走」や、不眠不休で100キロを行進する「総合訓練」など、過酷な伝統行事がある。1978年に始まった「藤山武装障害走」もその一つ。今月6日、障害走に挑む候補生たちを訪ねた。

 障害走は、学校敷地からさらに山あいの「藤山射撃場」で行われる。全長2・2キロ、高低差70メートル。山道と舗装道が入り交じるコースには対戦車壕(ごう)や低鉄条網、水平はしごなど、計20カ所の障害があり、候補生の体力を奪う。設定タイムは男性26分30秒、女性32分。時間内にゴールしないと、後日、クリアできるまで再挑戦することになる。

 この日は、朝からあいにくの雨。到着すると、迷彩服姿の候補生約360人が発着点の広場で準備運動をしていた。武装障害走の名前の通り、小銃を背負い、鉄帽や水筒など装備の総重量は10キロ近い。候補生は4人一組で90秒おきに次々と出走する。卒業生でもある広報担当の岡本真一1尉(47)が案内してくれた。

 スタート直後に立ちはだかるのは、高さ1・8メートルの「囲壁(いへき)」。助走を付けて飛びつき、軽々と越える候補生もいれば、苦戦する人も。2~3回挑んで越えられない場合は、コンクリートブロックを足場に使える。女性候補生には、踏み台が設置される。「まず壁の上に肘を付いて、上体を引き上げます」と岡本さん。後で挑戦させてもらったが、全く歯が立たなかった。

 実弾を使った射撃があるのも障害走の特徴だ。心臓破りの坂を登ったところに射撃場があり、身をかがめた状態で200メートル先の的を狙う。全4発中、1発でも当たれば合格だが、全て外すと、いったん坂を下って次の障害まで遠回りするペナルティーが科される。息を切らせた状態で狙うため、銃身がぶれないよう、集中力が求められるという。

 「歩くな」「根性見せろ」「もう少しで追いつけるぞ」。コース沿いでは、教官や同期生が激励の声をかける。障害走は、安全面の理由から広く公開はしていないが、日の丸の小旗を手に声援を送る家族やOBの姿も。また、障害走を含めた学校見学が、体験型プログラムを集めた「久留米まち旅博覧会」の人気企画の一つになっており、今回も予約受け付けを始めた初日に定員に達したという。

 10月の本番に向け、コースの試走など、候補生たちは夏から準備を始める。空中を進むロープ渡りや、模擬弾を使った手りゅう弾投てきなどを間近で見学したが、どの候補生も真剣そのもの。「障害走を忘れる卒業生はなかなかいない。いつも元気をもらいます」と岡本さん。汗まみれ、泥まみれになりながら、必死の形相で激走する姿に、理屈抜きに胸を打たれた。

 候補生は、学校卒業後は全国の駐屯地に赴任し、30人ほどの部下を持つ小隊長に就くのが一般的という。ただ、部下といっても年上ばかり。完走した小澤史哉さん(24)=山梨県出身=は、年明けの卒業を見据え「あと3カ月で小隊長になる。人の前に立って堂々とすることを意識したい」と抱負を語ってくれた。

 毎月第4日曜日(12月を除く)には、学校敷地内にある史料館が一般開放されている。広報班=0942(43)5215。

=2017/10/13付 西日本新聞朝刊=

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