嘉穂劇場で郷愁に浸る 飯塚市、芝居小屋から歴史95年 時代劇衣装レンタルや幸運スポット [福岡県]

11月下旬の平日昼、嘉穂劇場には団体客が訪れていた。ジョークを交えたスタッフの説明に、見学者からは笑い声も
11月下旬の平日昼、嘉穂劇場には団体客が訪れていた。ジョークを交えたスタッフの説明に、見学者からは笑い声も
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地下の奈落では、「廻り舞台」の仕組みを間近で見ることができる
地下の奈落では、「廻り舞台」の仕組みを間近で見ることができる
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鉄製のハートや小鳥などを組み合わせた「幸せ運ぶふくろう」
鉄製のハートや小鳥などを組み合わせた「幸せ運ぶふくろう」
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無料で着用できる時代劇衣装は外国人観光客に人気だ(嘉穂劇場提供)
無料で着用できる時代劇衣装は外国人観光客に人気だ(嘉穂劇場提供)
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劇場内には、昔の公演チケットも飾られている
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 前身の芝居小屋から95年の歴史がある飯塚市の「嘉穂劇場」。有名役者の公演がなくとも、気軽に国登録有形文化財の意匠や風情を楽しむことができる。今年からは時代劇衣装の貸し出しを始め、幸運スポットや地元芸術作家によるオブジェも見どころだ。

 「一番舞台に近いのはかぶりつきの席。演者からは、さらし首のように見えますが」。11月下旬、団体客計30人を前に、スタッフが1階の客席・舞台で説明を始めた。1階の広さは約1100平方メートル。座席は少し前方に傾く。「後ろの人でも見やすいように職人さんが設計しました」。一行から「へー」と感嘆の声が上がった。

 地下の「奈落」に降りれば、舞台を回転させる12本の力棒も間近に見ることができる。今ではほとんどの劇場が電動だが、ここでは人力。裏方は大変だが、貴重な「財産」を大切に使っている。

 かつらや着物といった時代劇の衣装も豊富に用意しており、無料の“コスプレ”も人気だ。この日は60代の女性グループが町娘になりきって、笑顔で写真を撮り合っていた。見学者は年間約3万人。近年は外国人観光客も増えている。

 社員旅行で山口県下関市から初めて来たという会社員、佐伯真一さん(47)は「建物のデザインが今にない情緒がある。いつか観劇もしたい」。老人会で訪れた田川市の井原利之さん(71)は「古いポスターやブロマイドもあって懐かしい。大水害の被害を受けた時、復旧の手伝いに来たが、中を見学したのは初めて」と興味深そうに見て回っていた。

 舞台奥にある「幸せ運ぶふくろう」は鉄のアート作家、其田正治さん(飯塚市)が制作。小さなハートがちりばめられている。客席用の照明器具には八咫烏(やたがらす)などのオブジェも飾られている。

 見て、体験して、郷愁に浸る-。「子どもたちにも来てもらえるよう、娯楽の要素も取り入れています」と同劇場。歴史や伝統を大事にしながら、新たな試みも忘れない。なんだか人生訓に通ずる気がした。

 ◆嘉穂劇場 炭鉱労働者の娯楽として、前身の芝居小屋「中座」が1922年1月に開場。全焼や台風での倒壊があり、31年に「嘉穂劇場」として再建。2003年には大水害の被害を受けた。見学料は中学生以上300円、小学生100円。定休日は水曜と公演日。12月27日~1月4日は年末年始休み。0948(22)0266。

=2017/12/05付 西日本新聞朝刊=

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