伝説のライブハウス「照和」 夢追う若者が今もステージに [福岡県]

昔と変わらぬ場所で営業を続ける照和
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名だたる歌い手たちのサインが残るステージで熱唱するJINさん
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甲斐よしひろさんがウエーターをしていた頃使っていたトレー
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 ♪時は11月ある晴れた日曜日 照和っていうこきたないフォーク喫茶で 約束の時間より1時間すぎて ドアの向こうで君が手を振った-。仕事帰りの夜の街。誰かが路上で弾き語る歌に足を止めた。デビュー間もない長渕剛さんの「男は女が必要さ」という懐かしい曲。歌詞に出てくる「照和」は長渕さんやチューリップ、海援隊、甲斐よしひろさんらを生んだ福岡市・天神にある伝説のライブハウスのことだ。ギター少年だった私も“聖地”に憧れ、足を運んだものだが、最近はめっきり店の話題を聞かなくなった。照和は今どうなっているの?

 ソラリアプラザと新天町にはさまれた路地の地下で照和は今も営業を続けている。かつてファンが列をなした狭い階段を下り、玄関の扉を開くとチューリップの曲が聞こえてきた。

 店の歴史が始まった1970年代。照和は夢を描く若者のプロへの登竜門だった。甲斐よしひろさんら多くのミュージシャンがウエーターをしながらライブで腕を磨きチャンスをうかがった。40席ほどのこぢんまりした店内は一部改装されたものの、ステージの壁に武田鉄矢さんら名だたる歌い手たちの若い頃のサインなどが残っており、当時の面影を感じることができる。しかし…。「昼は喫茶店をやってます。ライブですか? 今は出演者が減って月1回ぐらいですね」。店を切り盛りする支配人の武藤美代子さん(70)が話す。以前は平日もライブがあっていたはずだが。これも時代の流れか…。

 それでも、伝説の店を一目見たいと全国から訪ねて来るファンが絶えないという。店の隅にある8冊の大学ノートにそんなファンの思いがびっしりと書かれている。「夢にまで見たこの場所にやっと来られました。長渕さんの歴史がここから始まったと思うと涙がでそう」「50代のおっさんです。ビッグスターたちのパワーをもらい、また頑張って生きていきます」。照和伝説はまだ生きているということか。ならばやはりライブを見たい。日をあらためて出直すことにした。

    ◇      ◇

 照和のステージに立つには店のオーディションがある。アコースティックギターによる自作曲の弾き語りで持ち時間40分を聴かせることが条件。かつては全国からいくつもの出演希望があり、振り落とすのが大変だったという。今のレギュラーは10組ほど。プロを目指す人、仕事と両立しながら音楽を続ける人とさまざまだ。

 11月下旬、待ちに待ったライブを見た。岸川ゆかさん(20)、深草あゆみさん(34)、JINさん、Shinyaさん(37)ら地元の若手が出演。みな照和のステージは数回程度だが、その歌は粗削りで夢や人生、恋への一途な思いにあふれている。この夜は立ち見が出るほどの盛況。年配者が多く、照和がまだ続いていることを知って駆けつけたという客も少なくない。

 4人にとって照和とは-。控室で聞いてみた。「憧れの人たちが歌ったステージに立てるだけで幸せ」とJINさん、Shinyaさんが口をそろえる。その分、客の期待も大きく「毎回が真剣勝負」。プロを目指す2人にはいい刺激という。一方、この日が初ステージという岸川さんにそんな気負いはない。「チューリップとか甲斐バンドとか実はよく知らないんですよ。アコースティックライブができるお店と聞いて歌うようになったんです」

 昔を知る中年男性が焼酎を飲みながら、照和の歴史をあまり知らない若い子の歌に耳を傾ける。「それがまた面白いですよね」と男性店長が笑う。一時閉鎖した店が91年に復活した際、武田鉄矢さんがこんな言葉を残している。「人は誰でも青春のたまり場を持っている。私にとってそれは照和だった」。時代は移りゆけど、これからも若い歌い手たちの夢と青春のたまり場であり続けてほしい。

 《メモ》 ライブは月1回ペースで午後7時から。16日(土)はクリスマスライブを予定。入場料は1500円(ドリンク、ケーキ付き)。連絡先は092(751)5636。

=2017/12/06付 西日本新聞朝刊=

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