水車復活を観光呼び水に 野瀬さん製作3カ所巡る 線香作り、そば店…魅力満載 [福岡県]

一ノ瀬親水公園の水車の横に立つ野瀬さん
一ノ瀬親水公園の水車の横に立つ野瀬さん
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馬場水車場にある水車の動きをチェックする馬場さん
馬場水車場にある水車の動きをチェックする馬場さん
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県内最大という逆瀬ゴットン館の水車。近くのそば店の製粉の動力として使われている
県内最大という逆瀬ゴットン館の水車。近くのそば店の製粉の動力として使われている
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 古くから各地で精米や脱穀の動力として使われながら、電力の普及などで大半が姿を消した水車が、観光の呼び水として復活の兆しを見せている。久留米市の水車大工、野瀬秀拓(ひでひろ)さん(66)は国内外200基以上の水車を手がけ、国土緑化推進機構(東京)が選ぶ2017年度の「森の名手・名人」に認定された第一人者だ。野瀬さんが造った筑後地区の水車を巡ってみた。

 ホタル観賞や川遊びに多くの市民が集まる同市高良内町の「一ノ瀬親水公園」で存在感を放っているのが、直径6メートル、幅0・8メートルの水車だ。06年の公園完成に合わせて野瀬さんが製作した。

 水車に使う木は冬に葉を残したまま切り倒し、1カ月ほど放置する。すると、葉から水分が出て木が乾き、頑丈になるという。

 難しいのは曲線部分。素材選びから細心の注意を払い、曲線の部分は曲がった形で生えている木を使う。まっすぐ育った木を無理やり丸く切ると、強度が劣るためだ。公園の水車は設計に1年、着工から半年で完成した。

 水車に隣接する小屋を特別に見せてもらった。水車と棒で連結され、水車の回転に合わせて回る大きな歯車が、もう一つの小さな歯車とかみ合い、回転が動力に変換される。この力できねが動いたり、石臼が回ったりする仕組みだ。公園では年2回ほど、地元の小学生を対象に、水車を利用したそば粉ひきやそば打ち、試食体験を開いている。野瀬さんは「伝統に触れるいい機会。水車の魅力を感じてほしい」と話す。

 「1980年ごろには40軒以上あった『線香水車』が、今は二つしかなくなった。何とか伝統を守らないと」。そう話すのは、八女市上陽町上横山で線香の製粉、製造を手がける「馬場水車場」のオーナー、馬場猛さん(69)だ。

 ゴトンゴトンと音を上げながら回る作業場の水車は直径5・5メートルで、幅は一般の水車より広い1・2メートル。かなり速いスピードで回る水車の迫力を目当てに多くの人が見学に訪れるという。1918年に初代の水車が完成し、5代目となる現在の水車は2008年に野瀬さんが造った。

 線香の原料となる杉の葉を、水車の動力を生かし、15本のきねで製粉する。香料や防腐剤を使わず、天然素材にこだわった線香は、「市販のものより、においが部屋に残らない」と好評で、全国から注文が相次ぐという。馬場水車場では予約制で線香作りを体験できる(有料)。馬場さんは「水車は自然と人との共生の象徴だった。この時代にもっと再評価されていい」と話す。

 県内最大という直径7メートルの水車がある広川町の「逆瀬ゴットン館」。山間地の地域おこしのシンボルとして、1995年に完成した。野瀬さんの師匠である故中村忠幸さんが設計し、野瀬さんが造った。

 この水車の動力でひいたそば粉を使ったそばを提供するのが、ゴットン館に隣接する「水車そば さかせ」だ。店主の永野住男さん(72)は元八女消防本部本部長で、退職の10年ほど前から趣味でそば打ちを始めた。ゴットン館の来館者を増やすため、2006年に出店した。

 「水車の力でゆっくりと石臼でそばの実をひく昔ながらの作り方だからこそ、素材の風味を生かせる」と永野さん。機械でひくより粗びきになることが、歯ごたえある食感にもつながっている。

 そばを食べ、空を見上げた。澄んだ空気と清らかに流れる川、そして大きな音を立てて回る水車が自然の魅力を高めていた。

 メモ 各施設についての問い合わせは、一ノ瀬親水公園=0942(27)5371(宮ノ陣クリーンセンター)、馬場水車場=0943(54)3586、水車そば さかせ=0943(32)6525。

=2017/12/08付 西日本新聞朝刊=

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