デッサンで観察眼磨く 福岡市の絵画教室で体験 画家の苦労を感じる [福岡県]

四角形に鉛筆で薄く斜線を入れて、徐々にリンゴの形に近づける記者
四角形に鉛筆で薄く斜線を入れて、徐々にリンゴの形に近づける記者
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画題のリンゴの模型。机上の蛍光灯や室内灯に照らされ、陰影を帯びる
画題のリンゴの模型。机上の蛍光灯や室内灯に照らされ、陰影を帯びる
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記者が描いたリンゴのデッサン画。へたの部分を濃く描きすぎてしまった
記者が描いたリンゴのデッサン画。へたの部分を濃く描きすぎてしまった
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 絵が上手に描けるようになれば-。前任地で文化欄を担当し、絵画展の取材機会に恵まれ憧れを抱くようになった。中高生時代の美術の成績は芳しくなく、苦手意識から、専ら鑑賞するだけだったが、福岡市内の絵画教室がデッサンの体験講座を開いていると知り、門をたたいた。

 静物画や石こう像が所々に置かれ、本棚に画集が並ぶ。「ピカソアート絵画教室香椎校」(東区)の静かな室内で、白い画用紙を掛けたイーゼルという台の前に座ると、創作に挑む芸術家の気分になってくる。

 課題は赤いリンゴの模型を鉛筆で描くこと。「簡単そうだな」。油断する記者に、講師の広瀬新樹さん(47)が「デッサンは絵画の基礎。観察眼を鍛える手段で、ピカソやゴッホも鍛錬を怠りませんでした」と話す。「むむむ」。大家の名に姿勢を正す。

 主に使う道具は、芯の硬さが異なる3~4種類の鉛筆と、練り消しゴム、画題のサイズを捉える金属製の測り棒。まず構図を定める。イーゼル脇にある机上のリンゴに、左手で測り棒をかざし縦横の幅を目算。背筋を伸ばし、視点と対象の距離を一定に保つ。測り棒を紙に当て実寸よりやや長く幅を取り、幅に沿った四角形を薄く描く。「なぜ四角?」。疑問を抱きそうだが、これが絵の原型になる。

    ◇      ◇

 「木彫り人形をつくるため原木を徐々に削っていくイメージです」。次のステップの「形(かたち)取り」を広瀬さんはそう例える。角度を変えながら幾つも斜線を入れ、角をなくしていく。練り消しゴムで不要な線を消し微調整するうち、丸みを帯びたぼんやりとしたシルエットが残る。

 手先ばかりに視線がいくと「対象からなるべく目を外さないで」と注意されてしまった。輪郭の曲線の具合を凝視しつつ、作業を続けていると目が疲れ、頭がぼうっとしてくる。

 立体感を出す「面取り」の作業に入る前に深呼吸し気を取り直す。球体の面取りは、円が重なってできていると捉える。リンゴの輪郭線内に、地球儀の経度と緯度のように等間隔に何本も弧を描く。すると、徐々に立体感を帯びていくから不思議だ。

    ◇      ◇

 最後の段階は、陰影をつける「調整」。机上の蛍光灯が照らすリンゴは、光に近い部分ほど白っぽく、離れた部分は暗い。白い部分は練り消しゴムで軽くこすって線を薄く残し、暗い部分は、リンゴの丸みに合わせ、弧を描き重ね黒っぽくする。机上にできた影は、室内灯の光も相まって濃淡があり、やや硬めの鉛筆で加減し違いを写し出す。

 仕上げに机の表面の質感を表現するため、横線をうっすらと走らせようやく完成だ。作業に約2時間を要し、没頭するうち想像以上に神経を使い、ぐったり疲れてしまった。

 広瀬さんに評価をお願いした。「70~80点。上出来です。写真のように模写すればいいのではなく、特徴や質感を表現することが大事」という言葉に達成感がこみ上げる。今回のデッサン手法はあくまで、一般的な技法を基に、同教室が初心者でも習得できるように工夫した内容という。

 体験を通し、ほんの一端ながら、画家が創作に費やすエネルギーや苦労を想像できた。これまでとはひと味違う感覚で絵画を鑑賞できそうだ。

 ピカソアート絵画教室のデッサン体験講座 香椎校(福岡市東区香椎駅前2丁目)と、天神校(福岡市中央区天神3丁目)の2校で随時受け付けている(要予約)。所要時間は2時間で、体験料は3000円。今月28日まではキャンペーンで1500円。画材の持参は不要。

=2018/03/14付 西日本新聞朝刊=

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