ネパール山村での学校建設から20年続く支援 福岡博多東LC 経済的自立支援も視野 [福岡県]

福岡ニルマルポカリ学校で学ぶ子どもたち
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ネパールにある福岡ニルマルポカリ学校
ネパールにある福岡ニルマルポカリ学校
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NPO法人福岡・ネパール児童教育振興会の篠隈光彦理事長
NPO法人福岡・ネパール児童教育振興会の篠隈光彦理事長
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 ネパールの山村に、福岡博多東ライオンズクラブ(福岡市)が学校を建設し、20年を迎えた。当初は小学校だけだった学校を中高にも拡大。これまでに207人が卒業した。劣悪な教育環境を改善するという所期の目的は達成したというが、住民の経済的自立と学校の自主運営にまで視野を広げ、同クラブが立ち上げたNPO法人「福岡・ネパール児童教育振興会」(福岡市)が主体となり支援を続けている。

 同クラブが結成30周年記念事業として、福岡ニルマルポカリ小学校を開校したのは1999年7月。村に公立学校はあったが、学費が必要なうえ、自給自足が主な農家では子どもは貴重な労働力であり、就学しない子も多かったという。

 そんな地域でも「開校から10年は完全無償」を掲げたポカリ小学校には初年に約120人が入学。ただ、うち47人が1年目に留年した。農繁期には子どもに限らず、教師さえも学校を休んで農業をするという生活スタイルが背景にあったという。振興会は地域住民や保護者による学校運営組織に働き掛け、「学校に行こう」という運動を展開すると、出席率は改善していった。

 小学校を卒業してもその先の教育機関に恵まれなかったため、2003~07年には中高を拡充し、建物を増設。ポカリ小学校からポカリ学校に改めた。開校から10年後には「住民自身による学校経営」を目指していたため、農家が授業料を十分に払えるまでの現金収入を得られる手段として、03年にコーヒー栽培を促した。

 農家に、購入した苗木約6千本を植えてもらった。だが、水やりや手入れをする意識が農家になく、1年で半数が枯れた。振興会は日本の専門家に技術指導を依頼し、国際協力機構(JICA)の事業で貯水タンクなどを整備した。

 それでも十分な現金収入を得るまでには至っておらず、振興会は新たに奨学金制度を創設。現在も生産量は年約3トンで、目標の10分の1にとどまり、地元の農家が授業料を十分に払えるまでには至っていない。

 そうした中でも周囲は前向きだ。福岡に12年住み、コーヒーの販売会社を経営するネパール人のラジブ・シャカさん(37)は、農家の収入を後押しできるよう販路開拓に奔走。「紅茶文化のネパールに、もっとコーヒーを根付かせたい」

 ほかにも課題はある。ネパールは従来、小中高で計10年間の教育制度が一般的だったが、計12年間の新たな教育制度に移行中という。このため、ポカリ学校も2年の教育期間を追加できないか検討している。教室の増設などに約500万円が必要だが、財源のめどはまだ立っていない。

 これまでに日本側が負担した事業費は約1億2千万。振興会は団体の寄付やチャリティー事業の収益などを充ててきた。振興会は「ネパールとの友好関係を続けたい」としており、財源の寄付を呼び掛けている。

 福岡・ネパール児童教育振興会=092(712)4351。

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「日本で活躍できる人材を」 NPO法人福岡・ネパール児童教育振興会 篠隈光彦理事長

 福岡ニルマルポカリ学校の20年は、住民に教育の機会を与えただけでなく、ネパール市民の教育についての意識を高める一翼を担ったはずだ。

 ネパールにはカースト制度(身分制度)があった影響で、低い階級だった家庭は公立学校に行かず、親の仕事を継ぐだけのケースが少なくなかった。

 だが、ポカリ学校は開校から10年間は完全に無償だったため、低い階級で貧しい家庭の子どもも通うことができた。卒業して看護師になった人もおり、階級にとらわれず、教育の必要性を感じる住民意識が高まったと思う。

 私たちの動きと並行するように、ネパールは2016年7月、全国民に質の高い教育を受ける機会を23年7月までに確保するという方針を打ち出した。無償で通える公立学校が全国各地に整備されることになり、授業料を取るポカリ学校は特色ある教育が求められるようになった。

 これは、発展途上国に対する日本の支援のあり方とも連動していると思う。

 ポカリ村は当初、建物の建設費も運営費も全て日本側が持ち、いわば住民はサービスの受け手にとどまっていた。しかし、本来求められるのは住民自身による学校運営であり、われわれはコーヒー豆の栽培による住民の経済的自立を後押ししてきた。地元の自治体に補助金も求めている。

 ポカリ学校は日本語も教えており、今後はITの活用、医療系のカリキュラム導入を模索している。単なる労働力ではなく、人材として日本で活躍できる人を育てる支援をしていきたい。つながりの強い福岡に来る人も多いだろうし、ネパールの発展にも寄与することが期待できる。 (談)

=2019/01/13付 西日本新聞朝刊=

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