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九州豪雨4カ月 復興未来図、住民が汗 集団移転も視野に 朝倉市・杷木志波 [福岡県]

集落の復興について話し合う杷木志波の住民たち
集落の復興について話し合う杷木志波の住民たち
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 九州豪雨で大きな被害が出た朝倉市と東峰村で、住民たちによる被災地の「未来図」づくりの議論が進んでいる。集落などを単位にした自主的な話し合いでは、川や道路といったインフラの整備を含めて話し合いが活発になっている。「避難先から戻って住むなら安全な地域に」「子や孫が将来戻れる古里へ」。市と村は来年3月、復興計画を策定するが、この計画に自分たちの意見を反映させたいという思いが住民を動かしている。ただ、地域によっては「集団移転」という選択肢を視野に議論するところも。豪雨から5日で4カ月。特に議論が進んでいる地域の現状を紹介する。

 流木や岩、土砂を含む濁流で、朝倉市杷木志波地区は全壊27世帯、大規模半壊4世帯、半壊20世帯の甚大な被害を受けた。中でも4人が犠牲となった道目木集落は壊滅状態となり、隣の平榎集落でも家屋がいくつも流された。「安全が確保されれば帰りたい。しかし…」。住民は集団移転も視野に協議を進めている。

 「自宅があった場所は今も川の中ですよ」。10月13日夜、志波小体育館で市が開いた最初の「地区別復旧・復興推進協議会」。住まいや生活の糧だった農地を失った住民が悲痛な声を上げた。

 道目木集落の上流には、災害から4カ月がたっても、手付かずの流木や大きな岩が残る。災害直後の意向調査では9割が集団移転を望んだ。住民代表の坂本茂代さん(60)は「ばあちゃんに、これだけは聞いてきてくれと頼まれた。生きている間に住めるようになるのか。集団移転はできるのか」。

 河川改修、道路復旧、砂防ダム建設、のり面補強、宅地造成…。集落の復旧には費用がかさみ、何年かかるのか分からない。平榎集落の日野博さん(53)は「集団移転の用地を確保し、元の土地建物の移転補償を充実させてはどうか。費用も時間も節約でき、住民の安全も確保できる」と提案した。

 国の防災集団移転事業は原則「10戸以上」が対象で、実現には地域のまとまりが重要。市側は「集団移転という言葉が出た。進めるならば事業計画が必要。地域の意見を聞き、私たちも勉強し、煮詰めていく」。住民から行政へ、議論のボールは投げられた。

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市の計画反映へ議論 朝倉市・松末

 朝倉市の松末(ますえ)地区も豪雨で多くの犠牲者が出た。その中で乙石川流域にある石詰、中村、乙石3集落の住民が10月から自主的に始めた集会では、回を増すごとに復興案が具体性を増した。山深い谷あいに計約40世帯が暮らしていた3集落。家と農地が流され、ほぼすべての住民が仮設住宅やみなし仮設住宅などに避難しているが、集会には多くの住民が集まり、議論は熱を帯びた。

 10月22日にあった石詰集落の第2回集会。九州大教授らも支援し、テーブルに置いた集落の空撮写真に、住民たちが考えた「未来図」を描き込みながらアイデアが飛び交った。

 「川の流れはこっちがいい」「この付近の高い所を削って、みんなで住める宅地を造ったら」「農地がないと将来、若い人が住みたい地域にならんぞ」

 不安はある。土地などの権利関係は棚上げしているし、高齢者も多い地域で家や農地を造り直したとして、個人負担はどのくらい必要なのか。それでも、語り合う住民たちは笑顔を見せた。

 3集落は同29日、合同の集会を開催。空撮写真上の未来図を並べ合った。市の復興計画へ反映させたい3集落の案の一つが形になった。「豪雨による被害で苦しんでいる今だからこそ、こんな未来への青写真がほしいんですよ」。前へ進むための元気のもとを、住民たちは求めている。

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全村民参加目指し協議会 東峰村

 豪雨で3人が犠牲になり、住家約150戸に被害が出た東峰村。来年3月までの復興計画策定へ向けて村民の声を反映させる4地区ごとの「地域住民協議会」は10月下旬、それぞれの第1回協議会が終わった。東峰村は「全住民参加」を目指すのが特徴だ。第1回協議会には4地区で合計218人が参加した。村の人口約2190人の10人に1人に当たる。

 朝倉市も、8地区に同じような住民意見を拾い上げる協議会を発足させたが、参加住民は代表の20人前後に限られている。

 東峰村の協議会は最初から、テーブルに置いた各地区の空撮写真に住民が意見を書き込むワークショップ方式。このうち福井地区の協議会では「砂防ダムを造ってもらいたい」「JR日田彦山線の復旧を急いでほしい」などさまざまな意見が出され、住民は意見を書いた紙を写真に貼って情報を整理した。

 第2回協議会は11月下旬から12月上旬にかけて「5年後・将来の村や地域の姿」をテーマに開かれる。村民の声が具体的にまとめられていくのはこれからだ。

=2017/11/06付 西日本新聞朝刊=

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