ペットを手放す飼い主…身勝手な理由にがくぜん 犬と猫600匹を保護した男性の思い [福岡県]

NPO法人セブンデイズ理事長の上村光康さん
NPO法人セブンデイズ理事長の上村光康さん
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 興奮した犬のリードを軽く引っ張ると、足元をぐるりと1周し、お座りの姿勢でおとなしくなった。「訓練の成果。あとは新しい飼い主を待つのみだね」。まん丸の瞳をのぞき込み、眼鏡の奥で目尻を下げる。

 NPO法人セブンデイズ理事長の上村光康さん(61)=朝倉市=は、7日間(セブンデイズ)の収容期間を過ぎて殺処分される犬たちを引き取り、訓練して新たな飼い主に引き渡す活動に取り組む。犬との出合いは20代。大学卒業後、将来を考えた時に「犬好きに悪い人はいない」という言葉が頭に浮かんだ。恵まれた職場環境を求め、上京して一流ブリーダー(育種家)に弟子入り。だが見えてきたのは、研究をおろそかにし、利益のためだけに繁殖に注力する業界の悪習だった。

 「九州から悪習に打ち勝ちたい」。地元の朝倉市に戻り、英国原産のシェットランドシープドッグ専門の繁殖施設を開業した。施設名は「ビクトリーロード(勝利の道)うえむら」。地道な研究や訓練が実を結び、さまざまな審査基準を満たしたチャンピオン犬を相次いで出すまでになった。

 一方、犬と関わる中で保健所に足を運ぶ機会が増えた。「こんなに大きくなるとは…」「ほえたりかんだりするので飼えない」-。身勝手な理由でペットを手放す飼い主の多さにがくぜんとした。2009年には太宰府市の繁殖施設で犬23匹が餓死する事件が発生。「命を扱う職業として、自分にもできることがあるはずだ」と、筑紫野市を拠点にほそぼそと取り組んでいた犬猫の保護活動を本格化した。

 保護犬の訓練では「役者になって大げさに褒める」。愛情とアイコンタクトは欠かさない。16年の熊本地震と17年の九州豪雨ではペットの保護支援に奔走した。ただ、飼い主と避難してきた犬を追い返してしまった避難所もあり、災害後のペットの環境が整っているとはいえない現実に危機感を覚えた。

 約13年間で保護した犬と猫は600匹に上る。今月上旬には、これまでに新たな飼い主の下へ巣立った「卒業犬」56匹が大集合した。「どの子もちゃんと覚えている」。破顔しながらも、「目標は殺処分ゼロ。そのためにも飼い主の教育が不可欠だ」と力を込めた。

=2018/03/12付 西日本新聞朝刊=

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