保健師から看護大教授に 「地域に寄り添い、健康を見守る」 後進の育成に経験注ぐ [福岡県]

角森輝美さん
角森輝美さん
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 40年以上にわたり保健師を務めた久山町から、2017年に開学した福岡看護大(福岡市早良区)の教授に転じた角森輝美さん(64)は、後進の保健師育成に携わる。「荷が重い」と当初感じた今の肩書を授かって1年が過ぎた。大学も自身も歩き始めたばかり。「住民を愛し、生活を知り、地域に寄り添える保健師を育てたい」。目標の実現に向け、仕事の尊さを教壇で力説する日々だ。

 大学は保健師、看護師、助産師といった看護職を養成する単科大学として福岡歯科大の隣接地に開かれた。ここで公衆衛生看護学概論などの講義を受け持つ。

 公衆衛生はいわば「みんなの健康」のこと。「看護学教育の母」ナイチンゲールが、19世紀半ばに起きたクリミア戦争で傷病兵を看護した経験を踏まえ、病室に病人が密集することや換気の悪さの問題点を、統計を用いて指摘したことから重視されだした考えだ。

 その公衆衛生を例えば自治体ごとにつかさどるのが保健師の役割。「みんなの健康」や「まち全体の健康」を見る立場として「赤ちゃん訪問で家庭を訪れたとき、介護中のおばあちゃんがいたら長話してもいい」と講義で述べる。そこでの気付きは政策に反映できる。契約に基づいて個人に処置を施す訪問看護師とは異なる役割があるという。

 自信を持って仕事の魅力を語る原点は久山町にある。九州大医学部と50年以上連携し、町民の健診データを基にした生活習慣病の疫学研究を行う町。高血圧と脳卒中の関連をいち早く指摘した研究成果を受け、先輩保健師らの呼び掛けで「高血圧を追放する会」を過去につくるなど健康維持と研究への協力に対する町民の理解が深い。

 自身は2015年、同世代の町民と「わくわく茶話会」と称した認知症予防カフェを立ち上げ、週1回高齢者をもてなす取り組みをスタート。開始は町が運行するコミュニティーバスの到着時刻に合わせてバスに乗ってもらう機会とした。会場には高血圧を招く塩分を抑えた料理も用意した。

 仕事の意義を学問で裏付けようと11年間、大学と大学院の通信課程を受け、13年に社会福祉学の博士号を取得した。「久山で育ててもらい、町のおかげで人とのつながりをもらえた」

 学生にはこの夏、久山町での健診を見せるつもりだ。「地域丸ごとの健康を見守るためどんな努力が必要か、現場でたくさん気付いてほしい」と話す。

=2018/05/14付 西日本新聞朝刊=

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