「この子とは同じ境遇」家族失った女性、被災チワワの里親に [福岡県]

飼い主の進恭子さんや兄貴分のセリカ(左)と新しい人生を歩み始めた翔太(右)
飼い主の進恭子さんや兄貴分のセリカ(左)と新しい人生を歩み始めた翔太(右)
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 昨年7月の九州豪雨後、被災地で保護された雄のチワワが、新たな飼い主と“第二の犬生”を歩み始めた。里親になったのは、1973年に旧太宰府町(現太宰府市)などを襲った集中豪雨で家族2人を亡くした那珂川町の進恭子さん(52)。「この子とは同じ境遇。家族として大切に育てたい」と愛情を注いでいる。

 被災地をさまよっていた犬や、保健所に捕獲され殺処分直前だった犬と猫計23匹を保護したNPO法人「セブンデイズ」(筑紫野市)が発生から半年ほど、現地やインターネット上で元の飼い主を探していた。

 「1カ月の拘留期間が終了した被災犬1頭が来ました。オスのチワワで推定年齢8歳ぐらいです」

 進さんが交流サイトで投稿を見掛けたのは昨年9月。もつれた茶色の体毛を短く刈り、さっぱりとした姿でこちらを見詰めるチワワの写真が添えてあった。眺めていると、45年前の自身の境遇が重なった。

 73年7月30日。小学2年生だった進さんが熊本県の祖母宅へ泊まりに行った夜、局地的豪雨が九州北部を襲った。旧太宰府町の実家は押し流され、翌日、母と2歳の弟が変わり果てた姿で見つかった。

 「この子の飼い主も亡くなったのだろうか…」。案じるうちに、家族として迎え入れたいという気持ちが芽生えた。今年3月の「被災犬・猫譲渡会」で里親としてエントリー。愛犬で10歳の雄のチワワ「セリカ」を連れて面接を重ね、4月下旬に譲渡が決まった。大好きなプロ野球選手になぞらえ「翔太」と名付けた。

 「進さんなら最期まで面倒を見てくれる」。こう話すのは、翔太のしつけを担当したトレーナーの上田葉月さん(23)。引き渡しのために訪れた進さん宅で、玄関ドアに「災害時はペットの救助をお願いします」と書かれた札が下げてあるのを見て確信したという。

 進さんは猫2匹も飼っており、災害に備え、4匹の3日分の食料や移動用ケージを玄関近くに常備。自身にもしものことが起きた場合を想定し、自宅にペットがいる旨を記したカードも持ち歩いているという。進さんは「飼い主としてやるべきことをやっているだけ」ときっぱり。上田さんは「(翔太は)顔つきが穏やかになった。安心できる居場所が見つかり、幸せそう」とほほ笑んだ。

    ◇     ◇

 譲渡会に臨んだ被災犬10匹のうち、引き取り手が決まったのは2匹。被災猫5匹も含めて里親を随時募集している。また、被災犬の予防接種代などを支援するサポーター会員(月額千円)も募っている。

=2018/07/19付 西日本新聞朝刊=

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