8・15新聞読み即興劇 演出家・五味さん「平和への思い声に」 [福岡県]

劇の構成について脚本家たちと意見を交わす五味伸之さん
劇の構成について脚本家たちと意見を交わす五味伸之さん
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 「終戦の日」の新聞を読み合い、即興で劇をつくる取り組みを続ける若い演出家がいる。福岡市中央区の五味伸之さん(33)。「日頃は声に出せない平和への思いを発するきっかけになれば」と、戦後70年の2015年に始めた。戦争を知らない世代が増える中、若者の共感を呼ぶ継承や学びの方法を模索している。

 五味さんは8月6日生まれ。幼少期を広島で過ごし「あの戦争」を強く意識するようになった。中学3年の時に福岡市へ。姉の勧めで入った劇団で演劇の楽しさを知り、現在も福岡を拠点に演劇に携わっている。

 28歳の時、創作活動で訪れた香港で民主化デモに遭遇した。否定的な声を上げるのではなく、多様な考えを持つ人が意見を述べ合っていたことに驚いた。「さまざまな考え方を知るのが平和への第一歩だと気付いた」。帰国後、戦争に関する記事の切り抜きを始めた。

 祖父母が戦争体験を語ってくれたのはそんな時だった。長年しまっていた心の内に耳を傾けながら、「言葉では表現しきれない」という語り手のもどかしさを感じ取った。「劇の世界なら思いを伝えやすいかも」。こうして編み出したのが、新聞を使った即興劇「8月15日を劇にする」だった。

 演じるのは、若者を中心とした一般の参加者たち。まずは8月15日の朝刊から気になる記事を切り抜き、班ごとに模造紙に貼って「まわし読み新聞」を作る。各班についた演出家は記事中の登場人物や参加者の感想を材料に、戦争や平和が主題の筋書きを描く。参加者は即興で芝居をすることで「取り繕わない本音がにじむ」と五味さんは考える。

 「戦前に近づいているような不安を声に出したかったと気付いた」「自分の思い込みが視野を狭めていた」…。過去3回の参加者からは、思いを発信する場を広く求める声が上がった。戦後73年の節目となる15日は、長崎県佐世保市で初の県外開催をする。

 「演劇には人や社会を動かす力がある」と五味さん。戦争の記憶が途絶えないように、平和への意識が薄れないように-。舞台裏で“戦後100年”まで走り続ける。

    ◇    ◇

 25日午後1時と7時に福岡市東区箱崎2丁目の「ハコ町屋」で、これまでの活動をまとめた「8月15日を劇にした」が公演される。過去の参加者たちが舞台に立ち、積み重ねてきた思いを紡いで物語を編み出す。鑑賞料千円。

=2018/08/15付 西日本新聞朝刊=

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