猫ブーム、負の現実 野良猫増加…推定10万匹に 命守る福岡市と住民の活動 [福岡県]

耳先を桜の花びらのようにV字型にカットされた猫。痛々しくも見えるが、去勢・避妊手術を受けた目印だ
耳先を桜の花びらのようにV字型にカットされた猫。痛々しくも見えるが、去勢・避妊手術を受けた目印だ
写真を見る
ケージが並ぶ譲渡会場で、新たな家族となる猫を探す親子
ケージが並ぶ譲渡会場で、新たな家族となる猫を探す親子
写真を見る
皿に盛られたキャットフードを一気に平らげる地域猫たち
皿に盛られたキャットフードを一気に平らげる地域猫たち
写真を見る

 空前の猫ブームの中、見過ごせない負の現実がある。捨て猫の問題だ。福岡市では野良猫の数が増え続けて推定10万匹に上り、一部は殺処分を受けている。現状を打破しようと、市は野良猫に不妊・去勢手術を施し、地域住民と協力して清掃や餌の管理をする「地域猫活動」を支援している。動物愛護週間(26日まで)に合わせ、小さな命を守る現場を訪ねた。

 今月10日夕、福岡市東区の住宅地。海岸沿いの茂みから、猫5匹が駆け寄ってきた。地域猫活動に取り組む市民グループ「sakuraneko(さくらねこ)」の松原由美子代表(50)がキャットフードを皿に載せるとペロリと平らげた。

 猫にまつわるトラブルや殺処分を減らそうと2009年に始まった地域猫制度。市が認めた地区で暮らす野良猫に限り、住民有志がルールに基づいて世話をすることなどを条件に、市動物愛護管理センターの獣医師が不妊・去勢手術を無料でする取り組み。

 さくらねこの活動が始まったのは約8年前。地域猫の証しとして耳をカットし、毎日1回、食事を与える。活動に理解を求め、地元住民への声掛けも欠かさない。「猫の好き嫌いにかかわらず、活動を多くの人に知ってもらいたい。手術をして野良猫が増えなければトラブルも減る」と松原さんはつぶやいた。

   ■    ■

 「人慣れ抜群で甘えん坊」-。プロフィルが添えられたケージが並ぶ。福岡市で地域猫活動に取り組む複数の団体が博多区で定期的に開く譲渡会だ。生後2カ月から年を取った猫まで20匹が愛らしい鳴き声を上げていた。

 「新たな家族を」と訪れた人たちは真剣に見つめる。保護した経緯などの説明を受け、飼育条件や医療費の一部負担などを確認した上で、この日は3匹が新たな家族の一員として迎えられることになった。

 動物愛護管理センターや民間団体の主催する譲渡会で、飼い主が見つかる件数は年々増えている。だが、センターに持ち込まれ、里親に巡り合えない猫はやむなく殺処分される。17年度、その数は314匹に上った。

   ■    ■

 予算や職員数の関係で、地域猫の指定を受けている地区は現在、市内75カ所に絞られる。

 地域猫の網から外れた野良猫に対し、県獣医師会が10年に始めたのが「あすなろ猫事業」。住民が野良猫を捕獲後、動物病院で不妊・去勢手術を施し、元に居た場所に戻す場合、県獣医師会がその一部費用を補助する仕組み。9年間で県内で計4722匹が不妊・去勢手術を受けた。

 ただ、県獣医師会の予算も限られ、補助を受けても雌1万800円、雄5400円は自己負担となるのがネック。マリーナ動物病院(西区)の中岡典子院長は「獣医師会も予算が縮小されており、個人や企業に寄付を呼びかけているのが現状」と苦悩する。

 猫は春と秋の年2回、出産シーズンを迎える。繁殖能力が高く、数匹ずつ出産するため、地域猫などの活動の努力が、野良猫の増え方に追いつかないのが現状だ。「まずは飼い猫から野良猫への道を止めること」と地域猫の関係者は口をそろえる。責任を持って飼い猫の面倒を見る。「家族」の命を軽んじてはならない。それが殺処分ゼロへの出発点になる。

=2018/09/22付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]